<国際親善試合:日本1-0フランス>◇12日◇サンドニ

 日本が“秒殺カウンター”で大金星を挙げた。後半43分、自陣からの速攻で決勝点を奪い98年W杯優勝国のフランスから初勝利。DF今野泰幸(29=G大阪)がCKのこぼれ球を拾って50メートル以上もドリブル突破し、最後はDF長友佑都(26=インテルミラノ)が香川の決勝弾をアシストした。敵地で大苦戦しながら、最後のワンチャンスで勝利を手繰り寄せた。

 勝利への道は、意外な人が切り開いた。内容で圧倒された前半を終え、ハーフタイムにピッチへと戻る時だった。右ふくらはぎ打撲でベンチから戦況を見守っていた本田が、今野の肩に手を掛けてつぶやいた。

 本田

 ビルドアップの時(香川)真司と、長友と(今野とで)三角形ができる。そうなった時、もっと長友にパスを出していい。

 後半開始早々には、場内で爆発音が4度鳴り、フランスのゴール裏で発煙筒がたかれる。それでも欧州独特の雰囲気にのまれることなく、頭の隅にその言葉が残っていた。試合終盤の後半43分。今野が相手CKからのボールを拾うと、中央がポッカリ空いた。50メートル以上もドリブルで前進。右に長友、中央には香川がいた。カウンターから迷わず、長友へパスを出す。それが歴史的金星につながった。普段は地味な職人気質の男だ。この日だけは、浮かれ気味に話した。

 今野

 あれは自画自賛です(笑い)。本当はもうちょっと、ああいう展開を増やしたかった。日本がゲームコントロールしたかったんですけどね。結果的に、失点もゼロに抑えることができた。日本としてのチーム力、個人の能力を上げることを考えて臨みました。

 勇気ある今野の突破と、判断力-。そして終盤でも走力が衰えず、相手DFの嫌がる場所を正確に狙う長友のクロスが勝利を生んだ。後半36、40分と長友が突破し、中央の香川へ。いずれも微妙なズレで、決定機にはつながらなかった。だが三度目の正直で値千金の決勝点を生んだ。11年前、サンドニの悲劇の舞台となった完全アウェーの会場は、再び発煙筒がたかれ、ブーイングの嵐になった。

 長友

 一番危険なシーンを作ろう、というのはありましたね。個でいい勝負ができないと、世界のトップにはなれない。確実に今の日本は世界と戦える。向上心があれば、どこまでも成長できる。今日は勝ちましたが、まだまだやるべきことはたくさんある。

 W杯優勝経験国に勝っても、さらなる高みへと気持ちを切り替える。それが急成長を続ける日本のたくましさだ。本田の言葉を受けた今野、そして長友と香川の「あうんの呼吸」-。ザックジャパンの夢がまた、膨らんだ。【益子浩一】