【ブリスベン(オーストラリア)14日】サッカー日本代表のハビエル・アギーレ監督(56)が、八百長に関与した疑いでスペイン検察当局から告発された問題で、バレンシア裁判所が告発を受理した。複数のスペインメディアが報じた。いよいよアギーレ監督が本格的な捜査の対象となる。2月以降に手続きが始まる予定で、今後はアギーレ監督が出頭を要請される可能性がある。日本協会はアジア杯の指揮を任せる方針を示しているが、進退問題が再燃することになった。

 蒸し暑いブリスベンでの練習後、バスに向かう際、アギーレ監督は報道陣に「オツカレサマデシタ」と言いながら取材エリアを通り過ぎた。冒頭15分だけが公開された練習では、円陣で約30秒の訓示。この時すでに、告発は受理されていたこととなる。準々決勝進出をかけ、明日16日に前々回王者のイラクと対戦。大事なアジア杯の最中に、日本代表監督が本格捜査の対象になることが確実となった。

 バレンシア裁判所は、スペイン検察反汚職課から出された告発状を受理した。アギーレ監督や当時のサラゴサの会長イグレシアス氏ら41人は今後、裁判所への出頭や事情聴取などを強いられることとなる。

 本格的な捜査が始まることにより、時期は未定ながら、起訴へと発展する可能性は増した。大仁会長は「これからの展開の中で考えたい」(12月5日)、「それ(最悪の状況)も考えながら情報を集める」(同20日)などと慎重だったが、12月下旬、日刊スポーツの取材に対し「起訴されたら解任」と明言。本格的な捜査の結果、起訴となれば、明確な線引きをする用意があると明かした。

 スペイン紙では、告発状が受理された後の見通しとして「裁判官の命令で、告発状を出した検察官が被告人を事情聴取する。海外在住でまだ出頭していない被告人たちは出頭義務がある」などと伝えられている。6月には18年ロシア大会に向けたW杯アジア1次予選が始まる中、今後の本格的な捜査が、アギーレ監督の日本代表での活動に支障をきたす可能性はある。

 霜田強化担当技術委員長はアギーレ監督について「本当にいい監督。世界を見渡しても、なかなかこれだけの人はいない」と、実力を高く評価している。だが、その一方で、アギーレ監督の続投が困難になった場合の後任探しについて「(技術委員として)4年間やってきているし、心配していない」とも話している。

 アギーレ監督がスペイン検察当局に告発された後、原専務理事は12月18日の理事会後の会見で「アジア杯連覇をかけて戦うのは監督、選手の願い。そこまではしっかりやるし、その先をどうこうではなく、状況によって対応していく」とアジア杯での指揮を執ることは明言したが、その後については言及していない。だが、ステージが1つ進んだことで、指揮官はさらに追い込まれることとなった。

 ◆八百長疑惑

 10-11年シーズンのリーグ戦最終節。負ければ2部降格だったサラゴサは、レバンテに2-1で勝ち、1部残留を決めた。当時サラゴサのイグレシアス会長が、アギーレ監督や選手の口座にボーナス名義で計96万5000ユーロ(約1億3500万円)を入金。それがレバンテの選手らに買収資金として渡った疑い。<八百長疑惑経過>

 14年9月27日

 八百長疑惑でアギーレ監督が事情聴取を受けることになったとスペイン・アス紙が報道。

 10月1日

 日本代表のメンバー発表会見にアギーレ監督が出席。「私も報道で知った。このことについて心配はしていない」。

 同6日

 元サラゴサFWウチェ、元レバンテFWウェリントンが裁判所に出廷し、関与を否定。

 11月28日

 スペイン検察当局が、関係者33人の報告書を、バレンシア裁判所に提出する方針だとマルカ紙が報じた。

 12月4日

 欧州視察を終えたアギーレ監督が再来日。日本協会の法務委員長を務める三好豊弁護士らから約2時間の聴取を受けて潔白を主張。

 同15日

 スペイン検察当局は、八百長の嫌疑がかけられた41人をバレンシア裁判所に告発した。

 同18日

 日本協会は理事会を開き、アギーレ監督の続投を確認。

 同27日

 アギーレ監督が会見で疑惑を否定。銀行口座の出入金については「司法当局にお答えしたい」。

 15年1月11日

 パレスチナ戦の前日会見で、アギーレ監督は海外メディアから八百長疑惑についての質問攻めに遭った。