手倉森ジャパンの公式戦出場歴がない19歳がサプライズ選出された。U-22(22歳以下)日本代表の手倉森誠監督(48)が30日、沖縄・石垣島合宿を終えて帰京。未発表だったリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(来年1月12日開幕、カタール)メンバー残り2人を羽田空港で発表し、MF豊川雄太(21=鹿島)とDF三竿(みさお)健斗(19=東京V)が選出された。ボランチが本職の三竿は10月の福岡合宿で初招集。2度目の合宿で指揮官の心をつかんだ。

 石垣島合宿で唯一の10代だった三竿が、最終予選に挑む23人に滑り込んだ。帰京のためホテルを出る前、手倉森監督が選手を集めて通達。かん口令を敷いた上で豊川、そして三竿の名が呼ばれた。サプライズ選出も、場は沸かない。落選組の気持ちを考えれば手放しでは喜べず、張り詰めた空気の中、三竿は真剣な表情で受け止めていたという。

 「選ばれると思っていなかったので、言葉が出なかった」。帰京後、羽田空港で会見した19歳の感想は実直だった。無理もない。手倉森ジャパン招集は10月の福岡合宿が初めてで、鳥栖との練習試合も出場は4分間だけ。23人で最も招集が少なく遅かった。今月の中東遠征にも呼ばれず、公式戦出場はゼロ。全くの無印男が最後のイスに座った。

 表情もあどけないが、実力は折り紙付きだ。東京Vユース時代の13年にU-17W杯で16強入り。プロ1年目の今季は18歳で開幕スタメンをつかみ、42試合中39試合に出て一時は3位まで古豪を浮上させた。持ち味は球際の強さ。180センチの体格を生かして相手をつぶす。手倉森監督は「高さがある」と、まずボランチで唯一180センチある身長を挙げ「バランサーとしても中東相手に試合を整えてくれそう」と期待した。将来性も見越し「すぐスタメンかと言われれば、そうじゃないけど上の世代と絡ませておきたい」と、MF井手口と並ぶ19歳をリストに加えた。

 DF登録だが、起用は本職のボランチになる。前日29日の紅白戦も同ポジションでフル出場。指揮官から「都合がいいだけの選手で終わるな」と積極性を求められ、FW久保にも激しくチャージした。ファウルを取られたものの得意の肉弾戦でアピール。「最終予選では絶対に当たり負けないプレーをして五輪切符をつかみたい」と燃えている。

 合宿では落選したFW荒野と同部屋で、MF前田は東京Vの先輩だった。「全員の思いを忘れません」。予備登録50人のうち、外れた27人の思いも背負いカタールへ向かう。【木下淳】

 ◆三竿健斗(みさお・けんと)1996年(平8)4月16日、東京・武蔵野市生まれ。横河武蔵野FCジュニア-東京Vジュニア-東京Vジュニアユースを経て、東京Vユース時代の14年にトップチームに2種登録。MF登録で主にボランチ。長短パスを織り交ぜた展開力とボール奪取力が売り。兄雄斗(24)は湘南に所属。座右の銘は「やらないで後悔するよりやって後悔」。180センチ、71キロ。足のサイズ28センチ。B型。