45メートルの「コロコロ弾」がホーム初勝利の決勝点となった。J2札幌は福岡を下し、今季2勝目を挙げた。1-1で試合終了かと思われた後半44分、MF福森晃斗(22)が相手GKのパスをカット。ハーフウエーライン付近から無人のゴールにシュートを流し込み、試合を決めた。左足のキックに絶対の自信を持つ今季新加入の1発が、本拠地1勝をもたらした。

 ドロー目前の後半44分に、札幌ファン待望のドラマが待っていた。札幌陣内でのCKのクリアボールを、ハーフウエーライン付近まで上がっていた福岡GK笠川がキック。すると、ボールは福岡の選手ではなく、セカンドボールを拾おうと追いかけていたMF福森の前に転がってきた。

 「うまい具合にこっちに来た。あとは枠に飛んでくれればと」。ゲーム終盤とあり、両ふくらはぎがつりかけていた。ゴールまで約45メートル。疲労困憊(こんぱい)の中、力まず「3、4割の力」で蹴った。正面のGKをかわすように左足で軽くカーブをかけ、コロコロ転がすと、ボールは大歓声の後押しの中、数秒かけゴールにたどり着いた。

 プロ2点目だが、昨年清水戦での1号はCKからヘッドで決めたもので、これが足で決めた初得点になった。当然、お立ち台も初体験で「入っちゃいました。僕みたいな選手がヒーローでいいのかな」と苦笑いした。連係で奪った得点ではないが、貴重なホーム初勝利を呼ぶ一撃にバルバリッチ監督は「2点目はラッキーだったが、それは運を呼び込むにふさわしい内容だったから」と、独特の言い回しでたたえた。

 福森の精度あるキックは今季の新たな武器。桐光学園時代、戦術の一環でDFラインから、ひたすら対角線のコーナーめがけロングボールを蹴る練習を続けたことがきっかけで自信を高め、プロ入りの要因にもなった。指揮官が、前節までの左DFではなく、左MFで起用したのも、正確なクロスを持つ福森を高い位置に置き、攻撃の起点をつくりたかったからだった。

 指揮官の狙い通りではなかったが、意外な形で、その左足が勝利を呼んだ。「僕は最後に決めただけ。チーム全員でつかんだ勝利」。派手さはないが立派なヒーロー。札幌のスターは稲本、小野だけじゃない。1人1人が個性を出し合った先に、J1昇格が見えてくる。【永野高輔】

 ◆福森晃斗(ふくもり・あきと)1992年(平4)12月16日、神奈川県出身。桐光学園高(神奈川)から11年に川崎F入り。昨季までの4シーズンでリーグ戦16試合1得点、ナビスコ杯と天皇杯はともに3試合0得点。今季、札幌に加入した。正確な左足のパスが武器。183センチ、75キロ。