車いすのプロサッカー指導者で、関東リーグ1部に所属する東京23FCを指揮する羽中田昌監督(50)が、バイエルン・ミュンヘンの名将ジョゼップ・グアルディオラ監督のありのままの姿を描いた本を翻訳し、出版することになった。

 個別インタビューには決して応えない男、「ペップ」ことグアルディオラ監督-。その名将がバルセロナ時代から親交のある著者、マルティ・パラルナウ氏(元陸上の五輪選手)が1年間のシーズンを通して同行取材することを認め、クラブを指揮する上での本音、哲学、練習法を明かしている。何とも画期的な一冊だ。

 スペイン語版、カタールニャ語版の原書は430ページに及ぶものだった。コーチ修業としてバルセロナに留学していた羽中田監督は、自らのものとしたスペイン語とサッカーの知識を駆使して、14年9月からグアルディオラの真実の物語と格闘した。そして今春の出版にこぎつけた。

 その羽中田監督に聞いた。

-何に気をつけて翻訳しましたか

 羽中田監督 ペップの言葉を捻じ曲げることなく、厳密に伝えようと思い苦心しました。また、著者が現場の空気感を伝えようとしていたので、その現場の空気感を損なわないようにすることを意識しました。

-同じ監督として感じたことは

 羽中田監督 翻訳を終えて浮かび上がってきた、私なりの答えは「相手を研究し尽くすからこそ進化がある」とうことだった。研究し尽くして対戦相手を知るからこそ、自らの力を発揮するために自らを変える必要があることを知る。これがバイエルンの進化につながり、強いてはサッカーの変化につながっていると思えてならなかった。「自分たちのサッカーをやろう」などと簡単に口にしないほうがいい。日本サッカーの形も、どのチームの形も、それは選手の特性と対戦相手が決める。チームは進化(変化)を続けなければならない。チームは生きている。

 タイトルは「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」(東邦出版、1500円)。目まぐるしく戦術を変えながらチームを進化させていく、グアルディオラ手法に触発された羽中田監督。JFL昇格を目指して戦っていく今季は、ペップ流の多彩な戦術が東京23FCの中に見られるかもしれない。