指揮官が激怒した。J2札幌は讃岐と引き分け、2試合連続のドローに終わった。今季初の無失点。アウェーで勝ち点1を拾ったが、内容の悪さに怒ったバルバリッチ監督(53)が試合終了後に、敵地ピッチ上で選手を集め異例の説教を行った。激しい気性で、愛媛時代に3度の退席処分を受けた指揮官が“本領”発揮。ここ4戦3分け1敗未勝利も、激情型指揮官のカツで、反転攻勢を図る。

 我慢がならなかった。0-0で試合が終了すると、普段ならそのまま相手監督と握手をして控室に戻っていくバルバリッチ監督が、肩を怒らせピッチに歩み出ていった。相手チームとの握手を終え、スタンドのサポーター席に向かいかけた選手は、突如、スタッフから呼び止められ、ピッチ上に引き戻された。

 「足先のプレーだけでは結果は出ない。戦うということを、もっと大切にしないと。相手はロングボールを拾って押し込んでくる。相手はやるべきことをやっていたのに、札幌は球際で負けていた」。敵地ピッチ上で始まった説教は1分強。両腕を何度も前に突き出し、つばを飛ばしながらの激しいものだった。その後の記者会見でも顔を紅潮させ、腹立たしさを一気にはき出した。

 「ミスを怖がりDFラインが下がり、中盤が間延びした。こぼれ球を拾われ危険な場面が何度もあった。ベンチにいる私が、口酸っぱく言うのではなく、ピッチにいる選手が感じてやらなければならないんだ」。進行役の讃岐広報が「質疑応答を」と記者に振った後も、それを制して「もっと激しく強いプレーができたはずだ」と続けた。

 札幌監督に就任後、それほど感情をむき出しにはしてこなかったが、真の姿は超負けず嫌いで激情家。愛媛時代の10年5月29日甲府戦では、審判の判定があいまいだと異議を唱え、前半で退席させられ、2試合のベンチ入り停止処分も受けた。負けた試合のバスの中で、弁当を投げて怒りを爆発させたこともあった。

 指揮官を憤らせた理由。それはピッチでプレーしている選手たちが一番分かっている。「フィジカル勝負になるシーンが多かったけど、そこで簡単に奪われすぎていた。寄せや球際のところで、もっともっとやっていくことが必要」とMF稲本。勝つために必要なのは戦術や技術だけじゃない。バルバ流炎のメッセージを胸に、もう1度、勝負師の原点に立ち返る。【永野高輔】