忍者弾だ! G大阪FW宇佐美貴史(22)が5戦連発で5連勝に導いた。後半3分、新潟GK守田がキープしているボールを背後からかっさらい、ゴール。12日清水戦で同僚のGK東口が同じ形で失点し、新たな得点パターンに加えるため、GKの死角を東口に“取材”していた。同点の後半39分にFWパトリック(27)が決勝弾を決め、2-1。2位をキープした。これで公式戦7連勝とした。

 まるで、忍者のようだった。後半3分、MF遠藤が蹴った直接FKを相手GK守田がキャッチ。宇佐美は、油断したGKの背後に息をひそめ、隠れた。守田がボールを蹴るため落とした瞬間、スルリと飛び出しボールを奪った。右足でゴール右上に蹴りこみ、5戦連続得点。1万7417人の観客も宇佐美の忍びを静かに見守り、援護した。

 「落とす気がしていた。GKが(ボールを)持ったからと言って、フワフワと帰っていれば取れなかった。虎視眈々(たんたん)と狙っているからこそ、いいところにきて、ゴールにつながった」

 仲間のミスを再現した。12日のアウェー清水戦。東口がゴール前でボールをキープしていたとき、相手FW大前に後ろからボールを奪われた。長谷川監督から「軽率なプレー」ととがめられ、落ち込む東口を励ますため、宇佐美も考えた。

 それは、自分のものにして、やり返す事だった。東口の失態でGKの死角に気付き、本人を「直撃取材」。GKの真後ろから少しずれた角度に隠れ場所があった。「あの角度で待っていれば、見えないと分かっていた。これで全てチャラ。(東口の事は)笑い話になるかな」。仲間を助け、点取り屋としても引き出しを増やした。大前と宇佐美、教え子2人の忍者弾に指揮官は「俺は教えてないよ」と苦笑いした。

 これで、クラブ記録に王手をかけた。29日のホーム松本戦で得点をすると、05年アラウージョら6人が成し遂げた6連発となる。「次取らないと意味がない。あと3試合、毎試合取れれば一番いい」。今季8得点で得点ランク首位の22歳は、サリナス(横浜)が持つリーグ記録の8連発も射程圏内に入れた。ノッてるエースの挑戦はまだまだ続く。【小杉舞】

 ▼年少5戦連発 22歳の宇佐美がJ1リーグ戦5試合連続ゴール。J1で5試合以上連続得点は史上45人、57回目だが、その5戦連発時の年齢を見ると、最年少は02年のFWエメルソン(浦和=最終7戦連続)で20歳7カ月14日。宇佐美の22歳11カ月20日での5試合連続ゴールは歴代2位の年少記録となる。ただ、1位のエメルソンはのちに年齢詐称が発覚。Jリーグ登録の生年月日は81年9月6日だが、実際は78年12月6日生まれで、5戦連発時は23歳4カ月14日だった。つまり、22歳の宇佐美は実質的にはJ1最年少での5試合連続得点となる。