浦和MF柏木陽介(28)が巧みなパスさばきで、激しいプレスを仕掛ける湘南守備網を切り裂いた。1点リードの後半10分、ゴール正面やや右寄りでパスを受けると、左方向に流れながらシュートのモーションに。これにDF陣が反応した瞬間、右方向からゴールに迫るFW興梠にラストパスを通した。

 完全フリーを演出し、チーム2点目をアシスト。「直前にシュートとパスを迷ってうまくいかなかったシーンがあったけど、逆にあれでシュートの選択肢があることを、相手DFの意識に残すことができていた。それをうまく生かすことができた」と相手との駆け引きの内幕を明かした。

 湘南は序盤からハイライン、ハイプレスで、浦和の最終ラインにまで圧力をかけてきた。司令塔の柏木にはMFパウリーニョがマンマークで張り付き、周囲の選手がパスコースをふさぎにかかってきた。

 普段多用する、DFラインからの縦パスをワンタッチで前線に流す「フリック」も、守備陣に読まれていた。それをすぐに察知した柏木は、サイドなどへのパスに切り替え、湘南の狙いをかわした。

 あえて圧力の高い前線に出てパスを受け手は、まるで闘牛士のように、湘南のプレスをひらり、ひらりと受け流す。そして的確な配球で、チャンスを量産した。

 「プレッシャーが来る中でも回せれば、持ち味は出せる。下がらずにいい感じでできた。身体が動くのは分かっていて、あとはプレーの質。今日はミスもなかったし、決定的なパスも出せた。球際も戦えていた。基本的には自分に厳しくありたいけど、今日に関しては今年一番良かった」

 21日からは日本代表に合流し、W杯予選2連戦に臨む。

 「どのような形で試合に出るかは分からないけど、いい準備をしたい。自分はぎりぎりのラインで残っている選手だと考えている。だから出たら結果を出す。そのための準備をする。代表はスタイルが違うし、今回の相手は引いてくる。試合の状況も選手も違う。それを楽しんで、勝利に貢献したい」

 ハイプレッシャーの中でもミスなくボールをコントロールし、的確に配球する。テンポよく周囲とパス交換し、攻撃のリズムをつくる。ハリルホジッチ監督も期待するかじ取り役が、来週は日本代表に居場所を確保するための戦いに挑む。