稲本1号で無敗の難敵を撃破! 札幌はC大阪に1-0で勝利した。0-0の後半37分、途中出場のMF稲本潤一(36)が移籍後初ゴールを挙げ、これが決勝点となった。3月26日京都戦からホーム3連勝で勝ち点を17に伸ばし、3位に浮上した。前節まで8戦負けなしで首位だったC大阪に初黒星を付け、入れ替わり首位浮上の町田と勝ち点3差とした。

 36歳稲本が夢中で走った。後半33分にMF深井に代わって途中出場。4分後の37分、自陣中央でC大阪FW柿谷からボールを奪うと、MFジュリーニョにはたいて前に出た。再び受けて前に出ると、今度はFW都倉にはたいて、さらに前に出た。「この年で、あそこまで走ることは減ってたけど、やっぱり走ってみるもんやなぁ」。都倉からジュリーニョを経由して右のFW内村にパスが出ると、元代表の血が騒いだ。

 ぐんぐん加速して前線の選手を追い抜き、ゴール前まで侵入すると、内村から絶妙な縦パスが来た。中盤の底から駆け上がること65メートル。シュートの瞬間、イメージは完全にできあがっていた。「パスで決まった。後はGKが前に出てきたので逆サイドを狙うだけ」。最後は右からねらいすまし、ゴール左に突き刺した。

 川崎F時代の14年4月6日徳島戦以来748日ぶりの得点に「たくさんのお客さんの前で決めるって気持ちいいですねぇ。02年のW杯で2点取っているんですけど、あのゴールを思い出しました」と喜んだ。02年W杯日韓大会のベルギー戦、ロシア戦で決めたように、ボランチながら機を見てゴール前に忍び入り、正確かつ豪快に決めきる独特の嗅覚。世界レベルの決勝弾に、今季本拠最多2万1640人の観衆は、地鳴りのような大歓声でこたえた。

 昨季無得点に終わるも「今季は点を決めることを課題にしていた」と言う。Jデビューから20年目。進化のために用いたのは「グルテンフリー」と「股間フリー」だ。都倉にすすめられ、小麦食品を減らして体を絞り込む調整法を導入。キャンプでは、全裸で寝る「裸寝」を試みる都倉と同部屋も、これは導入しなかった。夜になると裸でうろうろする後輩の股間が気になったが、6週間の合宿で、何事にも動じない無の境地に到達。本来タフなメンタルは、鋼のように、より強固に仕上がった。

 途中出場でベテランが決定的な仕事をこなしアピール。今季はまだ先発2試合も「途中から出た選手も結果を出せば、いろいろな面で役に立つ。チーム全員でしのいだことも自信になる」と前向きだ。爽快なイナ1号で勢いに乗り、次節は、ついに9年ぶりの首位浮上を狙う。【永野高輔】

 ◆稲本の得点 Jリーグでは、J1川崎Fに在籍した14年4月6日徳島戦(鳴門大塚)の後半32分に右足で決めて以来、リーグ戦通算20点目。97~01年G大阪時代は118試合16得点、10~14年川崎F時代は99試合3得点をマーク。イングランド・プレミアリーグでは、02年から2シーズン在籍したフルハムで4得点。