リオでも救世主! 24歳以上のオーバーエージ(OA)枠でリオデジャネイロ五輪に出場する浦和FW興梠慎三(29)が、決勝弾で苦境のチームに勝ち点3をもたらした。前半にPKで先制された上に、DF槙野智章(29)が退場。10人になったが、1-1の後半19分に左足で勝ち越しゴール。腹痛で本調子には程遠い中、シュート1本で味方を救った。難敵ぞろいの五輪でも、苦しい時こそエースとしての活躍をみせる。

 最後の力を振り絞り、苦境のチームを救った。後半19分、右サイドからのFK。興梠はニアサイドにするりと抜けだし、キッカー柏木の縦パスを受けた。「前半に那須さんが決めていた分、そっちにマークが偏っていた」。抜け目ない動きから、迫るDFをターンでかわし、左足でシュート。GKの意表も突き、脇の下を抜けて転がり込んだ。

 値千金の勝ち越し弾。しかし「あれ以外はなにもできなかった」と苦笑いする。実は試合当日、突然の腹痛に襲われていた。薬を服用し、痛みを止めたが、その分だるさが続いた。試合後も「熱が出ているような感じもする」と表情をゆがめた。現に、得点を挙げた直後に交代を余儀なくされた。それでもチームを勝利に導いた。

 「点を取れず、チームを助けられない時期がありましたから」と興梠は言う。第1ステージ終盤、チームは鹿島、G大阪、広島と、宿敵相手に3連敗を喫した。苦しい状況で、エースとしてチームを救えず「正直、自信をなくした」と嘆く日々が続いていた。

 福岡戦。前半22分に退場者を出し、酷暑の中で数的不利の戦いを強いられた。決定的なシュートを浴び続けたGK西川は「3連敗中よりもはるかに厳しい戦い」と振り返る。それだけに、ワンチャンスを生かした興梠の得点は貴重だった。

 チームを救うプレーができた。自信はよみがえりつつある。「五輪まであと3試合、チームのためにできるだけ点を取りたい。今日でリーグ戦300試合出場みたいですけど、それよりもあと5点の通算100得点を目指したい」と言葉にも力がよみがえってきた。

 OA枠内定の発表後、2戦連続得点。「僕が選ばれたことに、批判があるのも知っています。それを覆したい。そのためにも、コンディションを上げながら、1点でも多くゴールを挙げたい」。五輪で日の丸を背負う資格があることを、本大会まで結果を重ねて示し続ける。【塩畑大輔】

 ▼J1通算300試合出場 浦和FW興梠が、2日の福岡戦(レベスタ)に先発出場して達成。J1史上86人目。29歳11カ月2日での到達は歴代10番目の年少記録だが、過去9人はGK2人、DF4人、MF3人。FWでは今回の興梠が最年少達成。これまでのFWの記録は広島FW佐藤31歳5カ月5日。