夏の全国高校総体王者の市船橋(千葉)が京都橘に競り勝ち、史上7度目の「夏冬連覇」へ第1関門を突破した。Jリーグ内定者3人をそろえた守備陣で、U-19(19歳以下)日本代表のエース、京都橘FW岩崎悠人(3年)を取り囲み、組織力で対抗。ヒヤリとさせられる場面はあったが、ゴールだけは割らせなかった。市船橋は2日の2回戦で前橋育英と対戦する。

 立ち見も含めた1万6061人の大観衆が注目した「ほこ・たて対決」は市船橋の「たて」に軍配が上がった。G大阪内定のMF高(こう)と金子のダブルボランチ、湘南内定のDF杉岡、新潟内定のDF原のセンターバック2人で、岩崎包囲網を敷いた。岩崎がボールを持つと瞬時に4人がかりで取り囲む。それでも止められず、前半35分には左ポスト直撃のシュートを浴びた。杉岡は「想像以上に強いし速かった」と驚き、原と高は「バケモンだった」と声をそろえた。大ピンチの直後、ポジショニングと寄せ方を修正。後半26分に2年生DF杉山の挙げたFKによる1点を、全員が体を張って守り抜いた。

 攻守で奮闘した高は、3年になって、FWからボランチに転向。川崎Fジュニアユース出身だが「同じ環境にいたら、自分の成長が止まる」と志願して、市船橋へ進学した。以前の「点取ればいいでしょ」という甘い考えは消え、守備への意識が芽生えた。「人として一生懸命やる市船のスタンスが、守備という表現で出せるようになった。昔の自分ではプロになれなかったと思う」。持ち味の予測と運動量で攻撃の芽をいち早くつみ、杉岡と原を助けた。

 スタンドには、3大会前に京都橘に敗れ「夏冬連覇」の夢を絶たれた先輩の磐田GK志村、相模原FW石田らが駆けつけた。高は「3年前の借りを返す思いが自分の中で大きかった。果たせてよかった」と胸を張った。前回大会は優勝した東福岡にPKの末敗れただけに、主将の杉岡は「勝負強さが出た意味で、大きな1勝だった」。史上7度目の偉業へ、堅守の市船が前進した。【岩田千代巳】

 ◆市船橋 1956年(昭31)開校。83年に既存の普通科と商業科に加えて体育科を新設。サッカー部は58年創部。部員数は79人。優勝は総体9度、選手権5度。野球、陸上、水泳なども全国レベルで、主な卒業生にスポーツ庁の鈴木大地長官。