J1磐田が、横浜から元日本代表MF中村俊輔(38)を完全移籍で獲得したと発表した。念願のスター司令塔加入で、背番号「10」を用意して迎えることも明かした。中村は「信頼を感じてプレーしたい」「全身全霊を掛け戦います」とコメント。移籍に決め手になった名波浩監督(44)への信頼を元担当記者の静岡支局長が明かす。

●「俺も海外に行かなきゃ」

 私はサッカー担当時代、00~02年にかけて日々、中村を取材していた。口数が多い選手ではなかったが、サッカーの戦術、技術論の質問がツボにはまると、延々と話していた。

 取材しながら感じたのが、「純粋なサッカー好き」。居残り練習は当たり前で、時にそれが全体練習の時間よりも長くなった。02年夏に横浜からセリエAレジーナに移籍。キャンプ地で、私たち取材陣が草サッカーをしていると、「いいな。俺も入れてよ」と言ってきた。「散々、練習した後でしょうに」と返しても、かまわずに入って笑顔でボールを追っていた。

 横浜で生まれ育ち、横浜のサポーターに愛されてきただけに、決断までに迷い悩んだのは当然だ。ただ、中村は名波監督を心から尊敬している。00年のアジア杯(レバノン)、日本代表での名波との天才レフティー連係は、現場で見ていても、美しくて、ワクワクさせられたが、大会後、中村は真顔で言った。「名波さんはすごい。セリエAベネチアでプレーしたことが大きいよ。だから、俺も1年でもいいから、海外に行かなきゃと思ってる」。

 振り返ると、中村は昨年4月16日、ヤマハスタジアムでの磐田戦に勝利した後、磐田MF小林祐希の感想を問われ、「うまいと思う。名波さんのもとでやっているから、もっとうまくなるよ。うらやましいよね」と話していた。名波監督も現役時代から中村を信頼し、自分のやりたいサッカーを実現してくれる選手として獲得に動いた。

 結局、中村は欧州で8年間プレーした。10年に横浜に戻った後も、活躍を続けている。昨年は負傷離脱の期間が長かったが、運動量は豊富で、FKの精度、テクニック、戦術眼は秀でたままだ。その実力と経験は、磐田の若手にも大きな影響を与えるはずだ。「磐田の背番号10」。中村のユニホーム姿をイメージしながら、その日を待つことにする。【静岡支局長・柳田通斉】