世界中で感染が拡大する新型コロナウイルスに、日本スポーツ界の要人が感染した。田嶋幸三会長(62)の陽性が確認された。

日本サッカー協会(JFA)は「現在の体調は、多少熱があり、検査したところ肺炎の症状もあるそうですが、元気です」などと文章を発表した。

田嶋氏は、国際サッカー連盟(FIFA)の理事も務める大物。日本オリンピック委員会(JOC)副会長も務め、2020東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事。東京五輪の中止、延期も取り沙汰される中、組織委員会理事にも感染者が出た。

田嶋会長はJFA会長として、2月26日から海外出張に出ていた。英国からオランダに入り、3月2日に欧州サッカー連盟(UEFA)の理事会で、日本が招致に乗り出している23年女子W杯について訴えた。JFAによると、この会議では「現在ほどの緊張感はなく、皆さん、ハグ、握手なども行っている状況でした」。出席したセルビアとスイス両協会の会長は、その後感染が判明している。

その後、直接米国に渡り、3月5日には国際親善大会に出た女子日本代表「なでしこジャパン」の試合を視察した。日本協会によると、なでしこジャパンの選手と同じホテルに滞在。ニューヨークにも立ち寄って公務をこなし、8日に帰国。帰国後の10日には都内でラグビーW杯組織委員会の理事会に出席。東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長らも同席していた。その後、東京・文京区のJFAハウスにも出勤。発症日と判明した14日にはJFAの理事会に出席していた。

体調不良を訴えたのは15日。微熱があり、JOC常務理事会を急きょ欠席。16日に文京区の保健所に相談。海外渡航歴と、同じUEFAの会議の出席者に感染者が出ていたこともあり、検査を受け17日午後に感染が判明し発表した。発症日は14日だった。なでしこジャパンの選手、森会長同様に、日本代表の森保監督、なでしこジャパンの高倉監督とは発症した14日以降に会っていないという。

田嶋会長はJFAを通じ「私と接触した方にしっかりと伝えなければならない。そして、お世話になっている文京区の方々に迷惑をかけてはならないと思い、このような形でお伝えすることとしました」などと声明を出した。「疾病と向かい合う事でこの新型コロナウイルスに対する偏見を無くしたりする事に貢献できればと思います」と結んだが、日本スポーツ界の中心人物の感染。感染拡大のリスクも含め、スポーツ界に与える影響は大きい。

○…JOC副会長でもある田嶋会長は15日のJOC常務理事会を欠席していた。発熱が原因と聞いていた福井専務理事は、新型コロナウイルス感染の知らせに「びっくりしました」と驚きながらも「そんなに体調は悪くはないと聞いている」と続けた。田嶋会長の妻の土肥美智子氏は国立スポーツ科学センター(JISS)に医師として勤務。JISSを運営する日本スポーツ振興センター(JSC)の広報担当者によると、濃厚接触者だった場合は「ガイドラインに従った対応をしないといけない」と説明した。

◆濃厚接触者とは 厚生労働省によると「濃厚接触者」とは「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当する者のことをいう。<1>患者と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者<2>適切な感染防護無しに患者を診察、看護もしくは介護していた者<3>患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者<4>その他、手で触れることまたは対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで患者と接触があった者。