日本サッカー協会が、第99回全国高校選手権の全日程を消化するため、特別運営資金1000万円以上を追加したことが7日、分かった。この日、1都3県に緊急事態宣言再発令が決定した。準決勝(9日)と決勝戦(11日)は埼玉スタジアムで開催予定だが、準決勝進出の4校には1人部屋使用などコロナ対策徹底を指示。余分にかかった滞在費を含めた有事の費用などを負担していく。コロナ禍の収まらない21年度は約28億円の赤字が見込まれているが、高校生の戦いの場を守るため、決断した。

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高校生の戦いの場を守るため、異例の「1000万円サポート」が実施される。日本協会は準々決勝(5日)の前に「勝ったチームは地元に戻らず、関東にとどまるように」と指示を出したという。準決勝まで中3日で、負けたチームは当然だが、勝ったチームも経費削減などの理由で、これまではそれぞれ地元に帰って準決勝の前日に再び関東へ戻るのが恒例だった。

しかし今回は(1)勝ったチームは関東にとどまる(2)ホテルで複数人部屋にしたチームは全員1人部屋にする(3)ホテルと練習場以外の外出自粛(4)選手団は外部との接触を一切避ける、この4つを徹底するように通達した。昨年末に大会が始まる時から毎日の検温や消毒の徹底などに加えた異例の指示だ。当然、滞在費がかさみ、不都合も出てくる。

そのための緊急予算で、使い道は今後、4校や埼玉県サッカー協会、埼玉県、放送局の日テレなどとも相談して決めていく。日本協会幹部は「それぞれ学校への補助金を追加で出すことも考えないといけない。言葉どおり緊急事態なので、決勝の11日までに何が起こるか分からない。約1000万円は追加で用意するけれど、場合によってはもっとかかることも考えられる。さらに追加でいくらお金がかかったとしても最後までやり通す」と話す。

昨年は新型コロナ禍で、インターハイも国体も実施できなかった。サッカー少年たちが自分を表現する場を奪われたことは、田嶋会長始め、日本協会の関係者は心を痛めていた。周囲から「甲子園も中止されたわけだから、選手権をやるのは難しいのでは」との声も聞こえてきたが、選手権実施への使命感は強かった。何とか開幕を迎えただけに、準決勝、決勝と完遂させたい気持ちは強い。

決勝までは残り3試合。今後、チーム内感染など、不測の事態が起きることも考えられる。想像もできない理由で、実施が難しくなることがあっても不思議ではない非常事態。日本協会は2年連続の大幅赤字が確定するなど、財政難ではあるが、来年度にメモリアルの100回大会を迎える伝統の高校選手権を全力で支え、大会成功に導く。

 

○…感染拡大防止策として、各校はさまざまな取り組みを行っている。ベスト4に残る山梨学院では「時間差」で食事。人数制限を設け、食事時間をずらすことで「密」を防いでいる。同じくベスト4の矢板中央(栃木)では外出禁止のルールを設定。練習グラウンドと、宿舎の往復に徹底する。両校ともにホテルも1人1部屋とすることで、他人との接触を防ぐ。出来る範囲の取り組みで、コロナに打ち勝っていく。

 

◆コロナ禍での高校スポーツ◆

▼野球 春のセンバツ、夏の甲子園ともに中止。8月には、センバツ出場が決まっていた32校を対象に、各校1試合のみの甲子園交流試合を実施した。

▼サッカー 高校選手権(12月31日~1月11日)は実施。

▼バスケットボール 高校選手権(12月23日~29日)は実施。しかし開幕前から新型コロナ感染者や濃厚接触者が続出し、男女あわせて7校が欠場または棄権となった。

▼ラグビー 高校選手権(12月27日~1月9日)は実施。

▼バレーボール 高校選手権(1月5日~10日)は実施。7日には男子の前回優勝校東山(京都)に新型コロナ感染者が出たため、棄権となった。

▼高校総体(8月10日~24日) 4月に史上初の中止が決定。