MF名波浩(35)が、J1磐田の「ジョーカー」になる!

 9日の開幕柏戦(柏)を4日後に控えた5日、名波は自らを、途中出場から流れを変える役割と自認した。1日の湘南戦など、これまでの練習試合では後半から出場してリズムを好転させてきた。内山監督からは先発の可能性もほのめかされつつ、トップ下での起用を示唆された頼れる背番号16が、開幕戦の切り札になる。

 まるで少年のような無邪気さだった。練習後に行ったシュート練習。名波はGK川口にはじかれると、絶叫して悔しがった。ゴールした選手が終わる条件で、いの一番に決めると「1本で終わっちゃった!」と寂しそうに声を響かせた。誰かが鮮やかに決めれば大声で褒め、外せばちゃかす。そんな快活な言葉に全員が引っ張られた。「練習は楽しくないとね」。名波が、チームを操っていた。

 その名波が、開幕戦の切り札になる。内山監督は、名波投入で圧倒した湘南戦を例に「浩が入ると試合が落ち着くよね」と言った。失ったリズムを取り戻せる唯一無二の存在。投入時はトップ下で起用する方針も示唆した。これには名波も「ハードワークを考えるとトップ下の方がいいし、ボールも動く」と納得顔。守備的MF河村は「名波さんの時は、守備の負担を減らすように努力している」とサポート態勢も万全だ。

 「引退」の2文字を撤回してまで、古巣に復帰した今季。名波は1つだけ自身に課していた。「戦力」でいること。「出ることに対しての執着心はない。ベンチだって、ベンチ外だっていい。ただ、戦力でいることが大事。それが、みんなに影響を及ぼせると思うから」。年始に古傷の右ひざをケガし、キャンプ中も痛んだ。だが、インターバル走では常に班の先頭を走り、仲間を鼓舞した。

 願う「王者のサッカー」の復活。「本当は1年かけてと思っていたけど、思っていたほど悪くない。夏までに『これがジュビロのサッカー』というのをつくっていきたい」。その道しるべとなる大事な開幕戦。ジョーカー名波は、キーマンでもある。【今村健人】