<J1:浦和3-2東京V>◇第17節◇17日◇埼玉

 浦和MF田中マルクス闘莉王(27)が、プロ入り初のハットトリックを決めた。東京V戦で鹿島戦(4月13日)以来3カ月ぶりにトップ下で先発出場。前半23分と後半13分に左CKから頭で合わせ、自ら志願したPKを含めた3得点で今季9得点。得点ランク3位に躍り出た。視察した日本代表岡田監督に圧倒的な決定力をみせつけた。チームも3-2で勝利。前節陥落した首位に返り咲き、シーズンを折り返した。

 闘莉王が圧倒的な決定力をみせた。まずは0-1で迎えた前半23分、左CKを頭で合わせ同点。先制点を許した後、引いて守られ、逃げ切られるのが今季の負けパターン。「やられ方がまずかった。だけど、勝利が必要だった」。そこからもその思いで貪欲(どんよく)に得点を狙い続ける。

 同36分にPKを自ら進んで蹴り込むと、後半13分には再び左CKから、相手DF那須の頭上からたたきつけるようなヘッドで自身初のハットトリックを完成させた。視察した日本代表岡田監督は「ポジションは関係ないでしょ。CK2本でしょ」と平静を装ったが、頼もしく映ったに違いない。

 3月の新潟戦以降、本職のDFではなく、主にボランチでプレー。この日は3カ月ぶりにトップ下。しかしポジションがどこであろうと関係ない。

 闘莉王

 27歳になっていろんな初体験をしている。FWになったり、トップ下とかやったり。いろんな初めてのことにチャレンジしているこの時期。ただ、自分の心に決めていることは全力を尽くすことだけ。

 力強い味方が来ていた。先週ブラジルから母マデルリさん(52)が来日。普段遠く離れている母とは、精神面や食事について電話で話をする。だが、チームがうまくいっていないこのタイミングで日本に招いたことで「水戸時代からそうなんだけど、来ると勝てる。自分の中でも何か違う。はっきりしないところがあったけど、そこがスッキリしたね」と、表情を緩めた。

 首位陥落からわずか4日後、チームを“定位置”に導いた。「いい方向に転がったり、悪い方向に転がったりするけど、毎日勉強しているところです」。

 次節川崎F戦(21日)は、阿部、堀之内、細貝が出場停止で不在。DF復帰の可能性もあるが、どこでプレーしようと、ゴールと勝利を追い求める。【栗田成芳】