<サッカー:全国高校総体>◇29日◇初日◇埼玉スタジアム第2グラウンドほか◇1回戦

 静岡県から17年ぶり4回目出場の東海大翔洋(前東海大一)が3-1で丸岡(福井)を下し、清水MF伊東輝悦(33)らを擁した91年8月7日の同大会準決勝(対四日市中央工)以来、6201日ぶりの全国勝利を挙げた。前半10分の先制点を皮切りに、MF鎌田椋(3年)が公式戦初のハットトリックを達成した。99年に現校名になってからは初勝利。今日30日の2回戦では、正智深谷(埼玉)と対戦(午前11時45分、埼玉スタジアム第3)する。

 東海大翔洋のあまりの強さに会場が静まり返った。静岡から駆けつけた約300人の応援団も、声援を送ることさえ忘れ、試合を見入った。そんな中で迎えた前半10分。CKを「ドンピシャ」のタイミングで、鎌田がゴール左隅にたたきつけた。全国舞台、それも初戦という独特の緊張感を伏兵の1発で吹き飛ばした。同14分には、FW鈴木晃生(3年)のスルーパスをフリーで受け、右足で冷静にゲット。前半終了間際にPKを与え失点したものの後半11分、またも鎌田が決め快勝した。

 県大会準決勝(対静岡学園)、決勝(対清水商)の「肝心な所で力を発揮する」(賤機徳彦監督=41)伏兵は「ただチームが勝てばいい。ハットはうれしいけど、自分の力だけじゃないので」と謙遜(けんそん)し笑った。陰の努力が開花した。仲間が居残り練習する学校のグラウンドを1人飛び出して、鎌田は自宅近所の公園で黙々とボールを蹴り続けた。部員104人の中で試合に出場できるのはわずか11人。「意地とプライドでつかみとった」(賤機監督)全国舞台で力を発揮した。

 07年のU-18日本代表候補2人を擁する丸岡に圧倒したのも、緻密(ちみつ)な戦力分析のたまものだ。相手のビデオ3本を取り寄せ、擦り切れるほど見たというイレブンは、相手の鼻をかくしぐさまで頭に入っていた。あとはシミュレーションを実践するだけだった。「静岡代表なんで、最低でも決勝に行かないと」と鎌田。東海大翔洋の強さが、復活した。【鶴智雄】