<J2:湘南1-0横浜FC>◇第35節◇14日◇平塚

 横浜FCのFWカズ(三浦知良)が、プロ23年目41歳にして新境地を開いた。右MFの位置でJリーグ通算400試合出場を果たしたカズは、後半から中央に絞ってプレー。公式戦で初めてボランチの役割をこなして、チームの攻撃をリードした。J1昇格を目指す3位湘南に0-1と敗れたものの、内容的には手応えをつかんだ様子だった。首位広島は2位山形に4-0で圧勝した。

 前半右サイドでプレーしたカズが、後半から都並監督の指示で中央に入った。「のり付け役をしてくれと言われた」。攻守をつなぐボランチの仕事。本来ボランチの根占と小野の前でボールをさばき、時には攻め上がる2人に配球した。ボールがテンポよく回り選手も流動的に動く。「個々のFWの特徴を生かすようなパスを出さないと」と、ボランチらしく言った。

 かつてのストライカーのイメージはない。「期待されるのは分かるけど、あまりゴールをしたいという気持ちはないな」と言う。Jリーグ通算150ゴールを前に足踏みしているが「あの位置では、現実的に難しい。自分が取るより、誰かに取らせたい」。これもボランチらしい発言だ。

 Jリーグで得点を量産した90年代後半に「最後はボランチで」と話したことがある。神戸時代にサテライトの練習試合で経験があるが、公式戦では初。瞬間的なスピードは落ちたが、ボールを扱う技術、受け手を考えた正確なパスは変わらない。「ヨークみたいだったね」と、プレミアリーグ得点王からボランチに転向し、シドニーFCやトリニダード・トバゴ代表を率いた親友の名を挙げたカズ。「負けたのは残念だけど、これを続ければ」と、勝利への手応えを口にした。【荻島弘一】