<J1:山形1-0千葉>◇第4節◇5日◇NDスタ

 この勢い、もはや「まぐれ」という言葉では片付けさせん!

 今季から昇格した山形が千葉と対戦し、残り時間4分で生まれたMF秋葉勝(25)のゴールで、1-0で勝利した。昇格後ホーム初勝利で通算2勝1分け1敗、勝ち点7とし、名古屋、浦和のビッグクラブを抜いて4位に浮上。突出した選手が不在で、クラブ予算もリーグ最下位だが、闘争心ではどこにも負けない。小林伸二監督(48)が率いる雑草軍団が、「台風の目」になりつつある。

 残雪の山々をバックに、ホームの温度が急上昇した。攻め込んでも得点できない状況に、秋葉が終止符を打つ。後半41分、数人が絡む速いパスワークで、千葉の最終ラインを攻略。相手DFの裏に抜けた秋葉が、千葉GK櫛野の動きを確認し、左足で決勝点をたたき込んだ。観客は総立ち。地鳴りのような大歓声が、晴れ渡った空を突き抜けた。

 「雪が降らなくても勝てるのを見せられた」。小林監督が笑う。ここまでホーム2試合は、3月14日名古屋戦(0△0)、同25日ナビスコ杯京都戦(3○1)ともに「降雪ゲーム」。ピンチに相手が足を滑らすなど、雪にアシストしてもらっていた。この日、シュート数はともに9本。実力を計れる万全のピッチで、がっぷり組んでゲームをものにできた。

 クラブの年間予算は、J1平均のおよそ3分の1の約10億円。トップ年俸はMF古橋の2250万円(推定)で、ビッグクラブの主力3~4人の年俸で、全31選手の年俸を賄えるほどの「安所帯」だ。同監督が「春の珍事」と振り返るように、元日本代表すらいない弱小チームがリーグ戦2勝1分け1敗と、予想外の健闘を見せている。

 反骨心が背景にある。開幕前、多くの解説者が山形を最下位予想。小林監督だけでなく、イレブン全員が「見返してやる」と言い切っていた。そして、ベテランも居残りさせて「できることを確実に」という小林イズムをたたき込まれている。この日視察した、日本協会の原博実・強化担当技術委員長は「ひたむきないいチーム」と称賛した。

 攻めてはつぶされ、ボールを奪われては相手を追い回したMF佐藤健が、選手の思いを代弁する。「どことやっても相手より下手。みんなチャレンジャー精神を持ってる」。個では勝てなくても、力を合わせれば勝負はできる。昇格1年目の新顔が確かな手応えを感じ始めた。【山崎安昭】