<J1:浦和1-0新潟>◇第9節◇2日◇埼玉

 浦和が闘将の一撃で劇的な勝利をつかんだ。ホームに3位新潟を迎えた上位直接対決は、試合終了1秒前の後半ロスタイム4分、右CKをDF田中マルクス闘莉王(28)が頭で押し込み、1-0で制した。昨季チーム最多タイ11得点を挙げた攻撃的ディフェンダーの今季初ゴールがチームを救った。

 仲間を信じ、己を信じて待ち構えた。4分間のロスタイムも残すところあと1秒。MFポンテからの右クロスが放たれると、闘莉王はすべての体力をつぎ込んで両足を踏ん張り、宙に舞い上がった。相手DFよりも体半身ほど高い打点でヘディングシュート。ボールが新潟GK北野の両手をはじいてゴールネットへ転がり込むと、感極まって両手で顔を覆った。

 誰もが引き分けを覚悟していた接戦を、自らの今季初ゴールで白星に変えた。闘莉王は試合後のお立ち台で「お待たせしました。勝つことだけを考えていました。皆さんと違って、僕らはゴールデンウイークには(旅行へ)行けないんです」と観客席を赤く染めた5万観衆を沸かせた。

 好調新潟の出足の鋭いプレスに手を焼き、フィンケ新監督のもと、今季新たに取り組んでいる素早いパスサッカーが影を潜めた。後半16分には新潟MFマルシオ・リシャルデスが、この日2枚目の警告で退場。そんな状況で、2試合連続の引き分けに終われば、首位鹿島との差が開き、チーム全体の自信と勢いを失いかねなかった。

 前節清水戦では、自らのファウルで先制のPKを献上。強気な闘莉王もさすがに言葉が少なく「ミスを気にしないでプレーするのがオレ」と自分自身を励まして臨んだ。開幕からここまでは「(前線に)上がりたいけど、我慢していたこともある」と昨季エジミウソンに並ぶ11得点を挙げた攻撃力を封印していたが、この日は解禁。前半8分のオーバーヘッドを皮切りに、5本のシュートを放った。

 試合中の接触プレーで鼻血を流しながらのフル出場。「最後の最後で決まってよかった。チームのために働くしかない。オレも少しは大人になったと感じてます」。鹿島とは、わずか得失点で2差。首位再奪取へ、頼れる男が乗ってきた。【山下健二郎】