<J1:鹿島2-1柏>◇第12節◇16日◇柏

 鹿島FW興梠慎三(22)が柏戦で豪快な2ゴールを決め、日本代表復帰へ猛烈アピールした。前半8分にヘディングで先制点を挙げ、直後の同11分には鋭い反転から鮮やかな追加点をマーク。2-1の勝利、そして首位キープに貢献した。日本代表で不動の存在であるFW田中達也(26=浦和)が左太ももの腱(けん)負傷で、今月下旬のキリン杯と6月W杯最終予選への招集が困難な状況の下、1月末のアジア杯予選バーレーン戦以来となる代表復帰が見えてきた。

 速さ、キレ、正確性。すべてがそろった一撃だった。前半11分、興梠が魅せた。左のMF小笠原からのクロスにトラップしながら反転。背後のDF古賀を一瞬でかわし、左足を一振り。「予想通りのトラップができたので、あとは思い切り振り抜いた」。鮮やかな追加点が突き刺さった。

 直前の同8分には小笠原のFKに反応。柏DF陣のすき間に入り込み、ヘッドで豪快にたたき付けた。打点の高さ、タイミングともに申し分なし。「フリーだったので(ボールが)来ればいけると思っていた」。代表の小倉コーチの前で返り咲きへ向け、インパクト十分のアピールだった。

 決してベストの体調ではない。4月中旬の紅白戦で痛めた左ひざは今でもうずく。50メートル5秒台の速さをいかすプレースタイルは、DFの激しいタックルを受けて倒される確率も高く、故障と隣り合わせ。時には周囲から「安全運転」の必要性を説かれるが「自分の持ち味はスピード。故障を怖がって、それが出せなければ自分は駄目になる」。この日も何度も激しい衝突がある中で、自身の哲学を貫き結果を出した。

 10日の清水戦前に「W杯には出たい。だから、この1年は大事になると思う」と話していた。6月のW杯最終予選に向け、浦和FW田中達の招集が厳しい状況だけに、チャンスが急浮上してきた。「代表にはチームで先発で出られないと呼ばれないと思うし、今は先発で出られている」。今季鹿島で一時は先発落ちも、しっかり取り戻した。それが自信になっている。

 プロ入り後、得点を挙げた試合は21戦17勝3分け1敗と高い勝率を誇り、まさに勝ち運を持つ。「先発で出るようになって、周りをいかすことも意識できるようになった」。抜群の身体能力に加え、経験を積んでプレーの幅も広がった。

 24日のG大阪戦後にリーグは一時中断し、チームも2週間の休暇に入る。代表に招集されれば当然休暇は消滅する。「休みの予定?

 入れてないです」とニヤリ。今の勢いと実力があれば、岡田ジャパンの「救世主」になれるはずだ。【菅家大輔】