<J1:横浜2-0浦和>◇第14節◇21日◇日産ス

 横浜が「俊輔ショック」を振り払う意地の勝利を挙げた。難敵浦和を相手に、後半14分に新人FW渡辺千真(22)、同20分にFW山瀬功治(27)がゴールを決め、2-0で下した。序盤は粘りの守備でしのぎ、相手の運動量が落ちた後半に攻勢に転じる作戦通りの快勝。日本代表MF中村俊輔(30)の復帰はならなかったが、順位も13位から8位に上げ、上位進出に向けて再スタートを切った。

 横浜イレブンは、スタンドに向かい誇らしげに手を振った。「SHUNSUKE」と書いた横断幕を掲げた観客からも、大きな拍手と声援が送られた。チームリーダーのDF松田が言った。「いろいろあるけど、それで負けたら駄目だよね。プロのプライドを持っているから。そういう気持ちになれないなら、プロになっていない」。誰もが勝利の重みを感じていた。

 当初は中村の復帰戦になる予定だった。開港150周年を記念した限定ユニホームも、中村が今季まで所属したセルティックをイメージした横じまにした。大々的な宣伝も行い、中継テレビ局もカメラを増やして対応。まさに「俊輔フィーバー」となる日のはずだった。だが、獲得はならなかった。もしも負ければ中村不在がクローズアップされてしまう。「今でも俊には来てほしい」(松田)という気持ちはあるが、何としても負けられない試合だった。

 浦和に力負けしなかった。前半の序盤は押され気味も、木村監督は「レッズは終盤に足が止まる」と見ていた。ハーフタイムにも「残り20分までしのげ」と指示した。しのぐ時間は予想よりも短かった。後半に入るとペースをつかみ、後半14分に渡辺が先制ゴール。同20分には山瀬が追加点を奪った。ともに相手を崩した状態でシュートに持ち込んだ。DF中沢が体調不良で欠場しても、ベストメンバーの浦和を、無失点にも抑えた。

 かつて中村がつけていた背番号10の山瀬が言う。「チームとしてやろうとするサッカーが形になってきている。前半は押し込まれたが、チームの自信や雰囲気はあった」。中村が特別な選手であることは間違いない。だが、獲得に失敗したからといって、チームの未来が必ずしも暗くなるわけではない。この日の戦いが大きな第1歩になる。【飯島智則】