<J1:川崎F1-1鹿島>◇第16節◇5日◇等々力

 首位を独走する鹿島が、退場者を出して数的不利になりながら川崎Fと1-1の値千金のドローで、2位以下との勝ち点差を8とした。前半33分にDF内田篤人(21)がペナルティーエリア内で手で得点機会を阻止したと判定され一発退場。直後のPKを決められ先制されながら、10人で粘り強く耐えて後半19分のFW興梠慎三(22)の同点ゴールにつなげた。苦闘の末の引き分けで、リーグ3連覇へ向け貴重な勝ち点1を手にした。

 どんな逆境にも揺るがない。これぞ王者鹿島の底力だ。0-1のビハインド、10人で戦う数的不利。そんなハンディさえ、はね返し執念のドロー劇。DF伊野波は「王者としてどう戦うか。10人でも最低1-1にしないといけなかった」と誇らしげに振り返った。

 リーグ戦8連勝中の鹿島にまさかの落とし穴が待ち受けていた。前半33分、相手MF谷口のヘッドをゴールライン上で体で阻止した内田がハンドを取られ、「サッカー人生で初めて」という退場処分を食らった。直後のPKで先制点を献上。だが、ここからが王者たる戦いぶりだった。

 オリベイラ監督の采配が逆襲へのメッセージになった。数的不利ながら守備的な選手を投入せず、MF本山を右DFに下げ、FW2人を残した。「もちろん監督の意図を感じた」と本山。ハーフタイムには指揮官の「1人が普段の1・5倍動け」というげきをピッチ上で実践してみせた。

 冷静な試合運びが値千金の引き分けを生んだ。MF小笠原が「パスを回して相手を消耗させたかった」と話したように、後半に入ると10人で巧みにパスをつなぎ、川崎F守備陣を揺さぶった。最後は川崎Fの運動量が低下。後半19分、相手MF寺田のパスミスを奪ったFWマルキーニョスのパスを受けたFW興梠が「シュートしようと思ったけど、GKが出てきたので冷静にかわせた」と言う値千金の同点弾をゲットした。

 主将小笠原の献身的なプレーも光った。6月24日のACL決勝トーナメント1回戦FCソウル戦で退場処分を受けただけに「今度は自分の番。(内田)篤人のために勝ちたいと思って必死でやった」と言う抜群の運動量は、「主将があれだけ走ったらおれ達もと思った」とMF本山が話したようにチームを活気づけた。FW興梠は「チームのため、篤人のため1人1人がなんとかしようと思った」と言い切った。連勝は8で止まったが不敗は14戦に伸びた。史上初の3連覇へ、鹿島が突き進む。【菅家大輔】