<J1:鹿島2-0大宮>◇第17節◇11日◇カシマ

 首位を独走する鹿島が大宮を2-0で下し、2位との勝ち点差8を守った。前半16分にFWマルキーニョス(33)のゴールで先制すると、後半44分に途中出場の新人FW大迫勇也(19)が公式戦では80日ぶり、リーグ戦では90日ぶりとなるゴールを決めてダメ押し。出場機会が減り、苦境に立たされながら努力を怠らなかった大迫の一撃が、3連覇を狙う王者をさらに加速させた。川崎Fと新潟が2-2で引き分けたため、広島を2-1で下した浦和が2位に浮上した。

 久しぶりに味わう感覚を楽しむかのように、歓喜の輪に吸い込まれていった。勝利を決定づけるダメ押し弾。大迫は「ふかさないことだけを考えた。(リーグ戦は)1得点で終わるかと思った時もあった。2点目までの時間?

 長かった」と本音を吐露した。

 突出した得点感覚を発揮した。後半44分。MFダニーロに1度ボールを預けてペナルティーエリアに侵入すると、折り返しのパスに対し、体を倒しながらダイレクトで右足を振り抜いた。高難度の一撃だったが「ダニーロが本当にいいボールを出してくれた」と仲間への感謝を口にした。

 5月に入り、1度つかんだ定位置を手放すと、苦悩の時間が始まった。不慣れな控え生活に「焦りはありました」。ACLとリーグ戦の過密日程で練習量も制限され、5月下旬に帰省した際には、鹿児島城西高の恩師小久保監督に「日程が詰まっていて調整が難しい」と本音を打ち明けた。

 だが気持ちは切らさなかった。「マイナスに考えずプラスに考えた」。出場機会が少ない分、個人練習の時間を増やした。休日でもクラブハウスを訪れ、体幹を鍛えた。帰省時にも石井フィジカルコーチのメニューをこなし、一時は体重が70キロから74キロ前後まで増加。鹿島関係者が「霜降りのような筋肉がさらに強くなった」と評したほど。この日の得点も奥野コーチとの居残り練習で研いだ、クロスに対し体を倒して浮かさずシュートするパターン。努力が形となって表れた。

 鹿島の鈴木満強化部長は「今は練習でも積極性が出てきた。積極性が出れば道は開ける。興梠もマルキーニョスもうかうかできなくなる」と称賛。大迫は「プロ入り後、戸惑いながらサッカーをやっていた時期もある。今は自分のプレーをやれば通用すると思う。ホッとしたけどまだこれから頑張らないと」と前を向いた。再び輝き出した19歳がリーグ戦15戦不敗と絶好調の鹿島を加速させる。【菅家大輔】