<天皇杯:仙台3-0東京>◇15日◇4回戦◇丸亀

 来季J1昇格を決めたJ2ベガルタ仙台が、ナビスコ杯王者の東京に完勝した。前半25分にFW中原貴之(24)が先制すると、後半14分にFW中島裕希(25)が追加点。「中中」コンビ先発時のアベック弾を初めて実現した。チームも今季を象徴する手堅いサッカーで、3回戦の大宮に続きJ1勢を連破。クラブ史上初の天皇杯ベスト8進出を決めた。

 王者撃破の口火を切ったのは中原だ。中島が放ったシュートが、ゴール前に詰めていた自分への絶好のパスに変化。「何となく来そうだった」と鼻を利かせ、ゴール左隅に蹴り込んだ。昨年度4回戦の東京戦でもネットを揺らしたが「0-1から一時的に追いついた去年の得点と違って、今年は先制点。勢いに乗れた」と胸を張った。

 相棒の一撃に中島が触発された。ハーフタイムに中原から「お前の番だぞ」と送り出されて発奮。ペナルティーエリアの外から右足で豪快に突き刺した。「中中」コンビが、同時先発時のアベック弾を通算18試合目で初めて実現。中原が「やっと決められましたよ」と言えば、中島も「中原が狙うと言ってたんでオレもね」と喜んだ。

 昨季からの成長を示す舞台だった。昨年度も4回戦で東京と対戦し、1-2で敗退。観戦していた前日本代表監督のオシム氏から「どちらがJ1か分からない」と絶賛された。だが、内容で勝っても試合に負けては意味がない。派手な攻撃サッカーから「まず守備」(手倉森監督)という手堅いスタイルに変革した起因が、昨季の東京戦にあった。

 この日も、しっかり守備を固めて主導権を握った。東京の応援席から上がった「サッカーしろよ、J2」の声は、裏を返せば手堅さへの褒め言葉。手倉森監督も「勝ち切れない昨季からレベルアップを表現できた。貫いたJ2の戦い方が通用した」と納得の表情だった。

 これでクラブ初の8強進出。12月12日の準々決勝で現在J1首位の川崎Fと当たる。昇格で得た勢いをさらに加速させた仙台が、また1つ強くなるチャンスをつかんだ。【木下淳】