<J2:仙台1-0C大阪>◇第49節◇22日◇ユアスタ

 劇的なフィナーレが待っていた。2位仙台が、勝ち点2差で追うC大阪との首位攻防戦に勝利。後半ロスタイムのラストプレーで、DF朴柱成(25)が決勝ゴールを奪った。2節を残し、9月6日以来77日ぶりの首位に返り咲き。次節28日にC大阪が敗れ、29日に仙台がアウェー徳島戦に勝てばクラブ初タイトルの優勝が決定する。

 「4分」表示の後半ロスタイム、4分30秒が経過した時だった。MF千葉の右クロスに反対サイドの朴が反応。頭から飛び込み、決勝弾を突き刺した。今季最多1万9063人で埋まったスタジアムの中心で歓喜の渦に吸い込まれ、試合再開のキックオフ直後に終了の笛。ラストプレーで、衝撃のエンディングを演出した朴は「決勝ヘッドは高校以来。痛いから苦手だし」と、おどけて振り返った。

 勝たなければ自力優勝がない仙台。ゴールへの執念が明暗を分けた。手倉森監督は「C大阪は引き分けでいいと思ったはず。うちは点を取らなきゃ先がない。その思いが通じた」と興奮した。選手も極限まで集中していた。朴が「何も考えずゴールに向かっていた」と言えば、アシストの千葉も「夢中で誰が飛び込んだか分からなかった」。MF梁も「一瞬、時が止まったようだった」と表現した。

 手倉森監督の熱血指導が結実した。「夢は教師だった」といい、学生時代は児童会長、学級委員長、サッカー部主将に立候補し常に人を動かしてきた。今は監督として教育する立場。朴も再生された1人だ。

 韓国Kリーグ水原時代に干され、仙台加入後も問題児だった朴。重なる負傷、精密検査では問題ないのに練習を休む日もあり信頼を失いかけたが、手倉森監督は何度も個人面談してチャンスを与えた。今や優良助っ人に生まれ変わり、来季に向けて「自分を変えてくれた誠さんの下でしかプレーできない」と周囲に漏らす朴。大一番で恩返しの1発を決めてみせた。

 今季1分け1敗のC大阪に初勝利。第1クールの敗戦で手堅いサッカーに転じるきっかけを与えてくれたライバルに借りを返した。「セレッソに勝ってこそ優勝」(手倉森監督)「リベンジしなきゃ優勝の言葉を口にできない」(梁)と意識し続けてきた宿敵を下して首位に再浮上。次節にも優勝が決まる。残り2試合も勝ち、クラブ初のチャンピオンベルトを巻いてJ1に殴り込む。【木下淳】