<天皇杯:G大阪2-1鹿島>◇12日◇準々決勝◇カシマ

 G大阪が連覇に「あと2」と迫った。今季公式戦3戦全敗だった鹿島に競り勝ち4強進出。両ひざ痛で欠場したFWペドロ・ジュニオールの代役として先発したFW山崎雅人(28)が、前半29分に先制、後半24分には勝ち越し弾と2得点で勝利の立役者となった。J2王者の仙台は延長の末、2-1でJ1・2位の川崎Fを退けて初のベスト4。G大阪は29日の準決勝で仙台の挑戦を受ける。

 ヒーローになったのは「伏兵」だ。前半29分、FW山崎がMF遠藤のFKに反応した。首をぐいっとひねって頭で合わせた。GKに当たったボールは、コロコロとゴールネットへ吸い込まれる。1-1の後半24分には、MF橋本の右クロスからのこぼれ球を右足で蹴り込んだ。「いいボールを送ってくれたから、決めることができた。運もあった」と感謝した。

 頭脳的なプレーも光った。鹿島DF陣がボールを持つと果敢にプレスを掛け、簡単にボールを蹴らせなかった。泥くさい守備で攻撃の起点をつぶした。「鹿島は伊野波のロングパスが起点になるので、右足ではなく左足で蹴らせることを意識した。うまくいった」と攻守に活躍し、胸を張った。

 今季公式戦3戦全敗だった宿敵にリベンジした。原動力は、山崎の熱いハートだ。昨季はACLとトヨタ

 クラブW杯で15戦7発と量産。マンチェスターU戦でもゴールを決めて脚光を浴びたが、今季はリーグ戦の先発はわずか5試合。折れそうになった心は、オフに大浴場のある銭湯に行って和ませた。そして、大好物の親子丼を食べ、体にたまったパワーをこの一戦にぶつけた。「3敗した相手。もう負けるわけにはいかなかった」と少しホッとした表情になった。

 「今、チームを引っ張っているのは山崎だ」とめったに選手を褒めない西野監督から絶賛された。「G大阪がタイトルなしでは終われない。あと2勝。勝つしかない」と山崎。まずはリーグ王者を倒した。「優勝」の2文字をつかむために、このまま走り切る。【奈島宏樹】