<プレシーズンマッチ:清水2-1新潟>◇2月28日◇アウスタ

 オレたちを忘れるな!!

 J1清水が開幕(3月6日=広島戦)を前に、最後のテストマッチとなった新潟戦で快勝した。前半こそ攻めきれなかったが、後半は積極的な攻撃に転じた。同3分、MF兵働昭弘(27)の起点から、FWヨンセンのゴールで先制すると、今季からFWにコンバートされた藤本淳吾(25)が、鮮やかなミドル弾で続いた。注目を浴びる新加入のMF小野、日本代表FW岡崎に負けじと「背番号13・10」が存在感を見せた。

 復活への道は、はっきりと見えた。後半16分、ペナルティーエリア右45度から藤本が、狙いすまして左足を振り抜いた。「理想的な弾道」と自画自賛したシュートは、きれいな放物線を描きながら、ゴールネットへ吸い込まれた。「イチくん(DF市川)が、いいボールをくれた。蹴った瞬間に入ったと思った」と、今季の対外試合でチーム最多の4得点目を納得の表情で振り返った。

 08年シーズンの途中に左足首を骨折する大けがを負った。長期リハビリを乗り越え、復活を誓った昨季はリーグ戦フル出場2試合で、1得点に終わった。チームの顔とも言える「背番号10」には、寂しい結果だった。心機一転。今季は本来のMFからFWへコンバートされた。攻撃的に変ぼうするチームに刺激されるように「体も動くし、いろいろなことができる。今は楽しくやれている」と、動きがキレてきた。

 兵働も本来の姿を取り戻した。後半3分、右サイドからのボールを受けると、正確なロングパスで左サイドを駆け上がったDF太田へ展開。「逆サイドのワイドが空くのは分かっていた。うまくさばけたと思う」と、ダイナミックな攻撃で相手DF陣を揺さぶり、先制点の起点となった。

 主将としての重圧が兵働を苦しめていた。昨季リーグ終盤で5連敗し「プレッシャーはないと思っていたけど、終わってみれば、あったのかなとも思う」。自身のプレーも精彩を欠き、途中交代が目立った。2年連続で主将に選ばれ、迎えた鹿児島キャンプでは、サブ組での出場が続いた。「試合に出るために必死でした。いい選手もたくさん入ってきたし、去年とは自分自身の置かれている状況は違う」。チームを率いるにはまず、自分のプレーを取り戻すこと。原点に戻った主将が、取り戻したこの日のスタメンでチームに欠かせない存在感を示した。

 開幕前のラストマッチで2人の“主軸”が本来の力を発揮した。長谷川監督は「(藤本は)10点以上取るという意気込みでやってくれてる。(兵働は)今まで負担が大きかった。伸二が入って、だいぶ肩の荷が下りて、のびのびやれてる」。小野がいて「10番」も主将もいる。戦力がかみ合ってきた。【為田聡史】