<J1:広島1-1清水>◇第1節◇6日◇広島ビッグアーチ

 広島のエースFW佐藤寿人(27)が先制の「奇襲弾」を決めた。開始早々に得たPK。ボールをセットしたDF槙野が蹴る気満々で、ペナルティーエリア外まで歩く。いつもなら振り向きざまに助走に入るが、今回は違った。笛が鳴ると突然右から佐藤が走り込み、左足でネットを揺らした。「1回使ったら、当分は使えない」と佐藤。コースはやや甘かったが、虚をつかれたGKは対応できなかった。

 役者2人は「去年からやろうと決めていた」としてやったり。清水GK西部は「槙野が蹴ると思っていたら、いきなり寿人(佐藤)が走り込んできた」と振り返る。PKには、蹴るまではキッカーと相手GK以外はペナルティーエリア外で待たなければならないという規則があるが、抵触しないトリックプレーだった。

 無得点だった清水の日本代表FW岡崎の前で、2年連続の開幕弾。視察した同代表の大熊コーチに世界基準の「賢さ」も見せつけた。終了間際の失点で引き分け「92分までは狙い通りだったが」と無念の表情になった佐藤だが「今は代表のことは切り離し、チームに貢献したい」。ゴール量産が、代表FW争いに生き残るすべだと知っている。【佐藤貴洋】