赤い悪魔が、王座奪回へ向けてアルプスのふもとで「武者修行」する。浦和がW杯開催中の6月下旬から7月初旬にかけて、オーストリアのシュタイヤーマルク州バード・ラドケルスブルクで約10日間のキャンプを実施することが26日、分かった。フォルカー・フィンケ監督(62)の意向を受けて複数の候補地から選定し、このほど内定した。欧州クラブも集結する同国で、Jリーグ中断期間に実戦形式でチームを強化し、昨季失速した「鬼門」の夏を乗り切るのが狙いだ。

 首位清水と勝ち点2差の3位と好調な滑り出しを見せた浦和が、「第2の開幕ダッシュ」へ布石を打った。今季はW杯開催期間中にJ1公式戦が中断。浦和は、6月9日のナビスコ杯予選リーグ横浜戦から7月18日のリーグ第13節G大阪戦まで試合がない。フィンケ監督は王座奪回と来季アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得へ、中断期間中でのチーム強化を重視。猛暑を避け、集中して取り組める環境と練習試合を組みやすいキャンプ地を模索していた。

 当初は北海道や韓国などが候補に挙がっていたが、Rマドリードやアーセナル、ローマといった名門を含む約400の欧州クラブがシーズン開幕前に、キャンプのために集結するオーストリアに内定。4~5試合の練習試合を予定し、交渉を進めている。滞在するバード・ラドケルスブルクは、人口約2000人の閑静で緑豊かな避暑地。日本のような夏場の湿気もなく、オーストリア国内で最も日照時間が長い。欧州の他地域に比べて遠征費用を抑えられる点も大きい。

 浦和は昨季前半戦を2位で折り返しながら、7月中旬から8月下旬にかけて、パスサッカーの生命線である運動量が低下。リーグ戦7連敗と失速し、2年連続無冠の6位に終わった。夏本番を前にキャンプで体力、戦術面を再強化できれば昨年の二の舞いを避けられる。さらに、W杯期間中に欧州のハイレベルな相手と実戦をこなすことで選手の士気も上がり、出場機会の少ない若手にとっては貴重な経験を積む場にもなる。

 浦和の海外遠征は、07年2月にオーストリアで開催されたブルズ杯に出場して以来、3年ぶり。シーズン途中では、前回のW杯開催期、06年6月下旬~7月上旬のドイツキャンプ以来となる。同年には初のJ年間王者に、07年にはACL制覇といずれもタイトルを手にしている。