<J1:名古屋1-0C大阪>◇第28節◇30日◇豊田ス

 初優勝への確かな道が、はっきり見えた瞬間だった。試合終了を告げるホイッスルが鳴ると、名古屋ストイコビッチ監督(45)は右手を握りしめ喜びを爆発させる。右太もも裏肉離れで欠場したDF田中マルクス闘莉王(29)が、私服姿でベンチに顔を出し同僚と抱き合う。出番のなかったFW巻は闘莉王の4番のユニホームを着て、兄貴分に勝利を伝えた。同監督は「激しい試合になるのは分かっていた。乾と家長を寸断できたのは大きい」と振り返った。

 闘莉王だけでなく日本代表MF金崎も左太もも裏肉離れで欠場。攻守の核を2人も欠いたが、名古屋の強さに変わりはなかった。後半にはC大阪の捨て身の攻撃を受けたが、GK楢崎が好セーブを連発。MFダニルソンは強靱(きょうじん)な肉体でC大阪MF乾を吹っ飛ばす。楢崎は「最後まであきらめずに戦えたのが勝利につながった。次も勝つ!」と絶叫した。

 W杯南アフリカ大会で闘莉王を欠いたナビスコ杯1次リーグは未勝利で敗退。チームの大黒柱はW杯後、右脇腹痛、右ひざ痛とけがを抱えながら強行出場を続けていた。だからこそ「闘莉王頼み」と言われたくなかった。闘莉王のためにという気持ちもあった。8日のアルゼンチン戦の翌9日、闘莉王はオフ返上で天皇杯3回戦札幌戦を観戦し、チームと行動を共にした。チーム一丸となっている証拠でもある。

 勝ち点を大台の60と伸ばした。残り6試合。次節11月7日は2位鹿島とアウェーで戦う。5月には4失点で敗れた相手だ。ストイコビッチ監督は「まだ我々は王者ではない。あくまで目指している立場。次は闘莉王も戻って来られるかもしれない」と闘将の復帰を示唆した。台風が日本列島近くを通り過ぎる中、「台風の目」とも言えるC大阪を下した。名古屋の初優勝は、もうすぐそこにある。【奈島宏樹】