Jリーグが、ドイツのブンデスリーガと業務提携へ向けた交渉を開始することが16日、分かった。両リーグで選手や指導者の情報を共有し、各クラブにスムーズに提供できるシステムの構築が狙い。現在、ブンデスにはリーグ優勝の原動力となったドルトムントMF香川真司(22)ら7人が在籍。ドイツ国内での評価も高く、今後も移籍する選手が増えることが予想されるため、これを機会にJリーガーの流出だけでなく、両リーグの交流を活発化させ、リーグ全体の活性化につなげる。Jリーグは今年中には契約をまとめる意向。

 国境を超えたリーグの提携は、過去に例のない画期的な試みになる。既にJリーグでは複数のシミュレーションを実施。近くブンデス側と交渉に入り、今年中には契約をまとめる予定。Jリーグの佐々木一樹常務理事(59)は「リーグの価値を高めるためにも挑戦が必要です。Jリーグから代表クラスの選手が多く移籍して、ドイツ国内で日本の認知度は高まっている。今が一番いいタイミングかも。リーグ同士で組むと、いろんなことができる」と話した。

 現在、ドイツでは日本選手の株が急騰している。高原や長谷部らの活躍で日本人の評価が定着。今季は香川がドルトムント優勝の原動力になり、内田はシャルケの主力として欧州CLの準決勝に進出した。今オフもG大阪のFW宇佐美がBミュンヘンと最終交渉中。15日付の独ルール・ナッハリテン紙には「香川たちは新しい輸出国から来た」の見出しで、日本選手のことを特集したほどだ。

 Jとブンデスの提携の最大のメリットは、選手らの情報共有になる。Jの選手の詳細情報や公式戦ビデオが、ブンデスの事務局で入手できるようになる。もちろん、その逆も可能。代理人の人脈頼みだった選手探しが、リーグに問い合わせるだけで選択肢が広がる。細貝や矢野らのように、移籍しても出番が回ってこないケースもあるが、佐々木常務は「欧州に挑戦するだけでなく、本当に必要とするチームを探してあげるのは、Jクラブの役目だし、リーグでその手伝いができればベスト」と話す。

 情報の少ないブンデス2部以下の低予算クラブの情報も簡単に入手できるようになるため、J1、J2で戦力外通告を受けた日本人選手がブンデス2~4部に移籍する道も開ける。トップ選手だけでなく、ユースも含めた各ジャンルの選手がドイツでのプレーの可能性が広がる。選手だけに限らず、指導者の交流も視野に入れている。リーグ同士のプロの指導者も交流すれば、Jのレベルアップにもつながる。

 さらに佐々木常務は「Jから一方的にドイツに行くばかりじゃなく、その逆も増やしていきたい」と話す。提携によりブンデスのベテランや若手ら、出番に恵まれない選手の受け入れ先としてJを選択するように、ブンデス事務局であっせんすることができる。Jリーグ創立初期はリトバルスキー氏やブッフバルト氏らW杯優勝を経験した豪華な顔が日本でプレー。そんなビッグネームが再びJのピッチに立つ可能性も広がる。

 大震災後、Jは入場者数が1割以上減るなど厳しい状況が続く。来季からは各クラブのスポンサー離れも予想される。佐々木常務は「指をくわえて眺めるだけでは、何にも始まらない」。J創立20年目の記念事業でもある提携は、Jの新たな活路を見いだす起爆剤になりそうだ。