【上海(中国)=菅家大輔】中国を直接、見てみたい!

 自分自身のチャレンジ!

 サッカー日本代表の岡田武史前監督(55)が、中国スーパーリーグ杭州緑城との最終交渉の前に、早くも中国での夢を激白した。6日、成田空港から上海入り。そのまま杭州に直行して、同クラブ幹部と最終的な条件面などの話し合いを行った。その直前、浦和からのオファーを断り、杭州緑城との交渉を最優先に選択した本音を、包み隠さずに明かした。

 中国の地に降り立った岡田氏は、穏やかな表情を浮かべた。この日の夕方。混雑する上海浦東国際空港の到着ロビーに上下紺のスーツ姿で現れると「杭州はACL優勝、アジア一を目指している。将来的なビジョンもしっかりしている」と前向きな思いを明かした。

 日本をたつ前に中国大陸より広い、壮大な夢を次々と口にした。悩み抜いた末に中国行きを決断。腹を決めたからか、率直に胸中を打ち明けた。

 岡田氏

 自分自身のチャレンジということでも刺激を受ける。アジアのA代表では、欧州などに選手が多いので(選手のコンディションを)上げることができないから、どこかでA代表も頭打ちになる。それとともに中国はこれから世界のあらゆる部分でキーになっていく国です。そういうところを自分が直接見てみたいという気持ちがあった。

 浦和からの監督就任要請を断り、複数あったオファーから杭州緑城との交渉を最優先した。この日、上海から陸路で杭州入りし、クラブの宋衛平オーナーと会談。今日7日には広大な敷地を有する練習場を視察予定だ。現時点で4年の長期契約を提示された模様で、条件や将来のビジョンなどに満足すれば、近日中に結論を出す可能性は高い。

 岡田氏

 お話をいただいて、自分が直接交渉するのは嫌だったので、条件面などは代理人にやってもらった。(杭州緑城は)写真で見たけれど、直接自分の目でも見てみたい。オーナーと会って、直接チームのこととか、クラブのビジョンを聞くことにしている。まだ、決定というわけじゃないけれど、僕がそのクラブに実際、足を運んで行くということは可能性を感じるから。まあ、ほぼですね。

 気持ちが傾いたのは、常勝軍団を目指す杭州緑城の高い志に感銘を受けたからだ。「このチームは中国王者とか、ACL優勝とか、高い目標を持っている」。昨年のW杯南アフリカ大会で日本をベスト16に導き、横浜ではJ1を2連覇。常に頂点を目指してきた自分に重なるものがあった。

 日本代表監督を退いた昨夏、周囲には「当分は監督をやりたくない。しばらく休んで、やるんなら海外だな」ともらしたことがある。選手に比べ、日本人指導者が海外で成功した例はほとんどないだけに、新たな潮流をつくる意味もある。

 岡田氏

 ゆくゆくはヒデ(中田)とかの、ヨーロッパとか世界で名前の知られている人物が(海外で監督を)やればいい。中国で日本人が指揮を執るということは、いろんな面で影響がある。国レベルではできないことができるかもしれない。アジアもこれから、流動性の高い世界にならないといけない。

 監督として中国で好成績を収めることは、一サッカー指導者の成功にとどまらない。日本人指導者が中国で認められれば、70年代に米中の間を取り持った「ピンポン外交」ならぬ、日中友好促進につながる「サッカー外交」の側面も期待される。今回の挑戦は、その試金石にもなる-。監督、岡田武史。さらなる高みへの1歩を間もなく踏み出す。