Jリーグが、今季中にバニシング・スプレー(消えるスプレー)を導入することが7日、分かった。ゴールが直接狙える地点でのFK時、ボールの位置と相手選手が作る壁の前に白い泡で線を引くもので、現在開催中のW杯で使用し、注目されている。導入により、遅延行為を減らし、スピードアップ、実際のプレー時間増大を目指す。近日中にJと日本サッカー協会が協議し、導入時期を決める。

 Jから無駄なシーンが消える。W杯で世界中に披露された消えるスプレーを、今季中に導入する。村井満チェアマンらJ幹部がW杯を視察し、その効果を直接確認した。早期採用に向け、W杯終了直後にJ幹部と日本協会の審判委員会が協議し、導入時期などを決める。

 J関係者は「時間を短縮できるので、実際のプレー時間が増える。早期導入を目指す」。直接ゴールを狙える位置でのFKの時、相手選手はボールから9・15メートル以上離れなければならない。今まで、壁に入った選手は、1歩でもボールに近づくため、ステップを細かくして少しずつ前進するなど、無駄な時間があった。しかし消えるスプレーが導入されれば、時間のロスを防ぐことができる。

 19日のJ再開からの導入を目指しているが、消えるスプレーの成分は、芝生に悪影響を及ばさない特殊なもの。現在、W杯で使用中のスプレーはアルゼンチンで製造されており、空輸に時間がかかる。そのため、J再開時には間に合わない可能性が高いが、早期導入を目指している。

 消えるスプレーは、すでに数年前からブラジル、アルゼンチンなど南米のプロリーグで用いられている。それまで、直接FK時に、もめ事は多かったが、スプレー導入後、無駄な時間を省くことができたという。

 今年就任した村井チェアマンは、ピッチ内外のフェアプレーを強調している。サポーターには観戦マナーなどを呼び掛け、プレーヤーにもルール厳守やモラルを求めている。ボールまでの9・15メートルは、試合中に厳密にスケールで測ることはしない。現状では、審判の目を盗み、壁がセンチ単位でボールに接近することは避けられなかった。しかし、今後は芝生の上に吹きかけられる白い泡により、ルール違反の余地はなくなる。事実、W杯ではどの選手も明確に引かれた白い泡のラインによって、コントロールされている。

 今回のW杯では、消えるスプレーの他、インカム(無線機)とゴールラインシステム(GLS)が注目されている。スプレーは空輸費用も含め、1本約1000円で、大きな負担にならない。インカムはJ再開時からJ1、J2での導入が決まっており、1セット約100万円のフランス製の機器をすでに40セット購入済み。ゴールラインシステム導入は、検討したものの、膨大な費用がかかるため、見送る。

 スプレー1本で、スピードアップが図れるなら、導入しない手はない。試合中のもめ事や、混乱による空白時間を減らし、プレー時間を増やすため、Jリーグの改善策が注目される。

 ◆バニシング・スプレー(Vanishing

 spray)

 直訳すると消えるスプレー。主審が一時的にピッチ上に泡を吹きかけ、ボールや壁の位置などをしるすもので、1分から数分で完全に消える。スプレーの主成分は水(約80%)で、芝生に悪影響を及ばさない。他にブタン(約20%)など。00年にブラジルのカップ戦で初めてプロの試合に用いられた。国際大会としては11年アルゼンチンで開催された南米選手権で使用した。13年にトルコで開催されたU-20(20歳以下)W杯、14年マルタ開催のU-17(17歳以下)W杯でも採用された。W杯での使用は今大会からで、開幕戦のブラジル-クロアチア戦で西村雄一主審が使用し、世界中に知れ渡った。