仙台が23日のリーグ再開へ向けキャンプを張る千葉、埼玉から5日、うれしいバックアップの知らせが届いた。先月29日、日本代表対J選抜の慈善試合に出場したMF梁勇基(29)を見て感動したという埼玉県の焼き肉店経営者が焼き肉提供を申し出た。1月25日からキャンプ漬けの選手を気遣い、手倉森誠監督(43)は「選手だけで食事するのもいい」と選手の決起集会にするプランを明かした。市原市の佐久間隆義市長(64)も同市サッカー場の継続使用を提案した。

 千葉キャンプ2日目の午前練習が終わった時だった。FW柳沢主将とMF梁、関口の両副主将が手倉森監督に呼ばれた。伝えられたのは「焼き肉店招待」。慈善試合に出場した梁の姿に感動したという、同じ在日朝鮮人で埼玉県在住の焼き肉店経営者が、仙台の選手に食べてほしいと申し出た。心温まるプレゼントに3選手の表情が緩んだ。

 震災発生以来、結束力の強い仙台イレブンが、選手だけで食事をするという機会がなかった。手倉森監督は「(震災がなかったら)外食は普通のこと。少しでも普通に戻すことで前へ進める。選手だけで食事をするのもいい」。13日にさいたま市に移動後、再開戦となる23日の川崎F戦へ大事な決起集会になりそうだ。

 被災地の方々に申し訳ないという思いは常にある。だが仙台は異例の長期間、“ホーム”から遠ざかってきた。1月25日から鹿児島、宮崎で40日間の長期キャンプを行い3月5日の開幕戦(対広島、0-0)へ。しかし同11日に震災が起きた。仙台に戻り、平穏に練習できたのはわずか5日間。精神的疲労は蓄積されているはずだ。

 クラブ支援の声は続々届いている。現在キャンプを張る市原市の佐久間市長からも「関東で連戦がある時は拠点として使って」と、市の施設である姉崎サッカー場と市原臨海競技場の使用許可をもらった。同競技場で10日に行われる東洋大、流通経大との練習試合を同市民に告知し、被災地への募金活動をする計画もあるという。手倉森監督は「ありがたい。試合が終わった選手が手伝えれば」と話す。周囲の支えに梁は「川崎F戦は勝たなければならない。結果にこだわって勝ち点3を持って仙台に帰りたい」。大勢の思いをくみながら仙台は、謙虚にサッカーに集中する。【三須一紀】