東日本大震災で中断していたJリーグが今日23日、48日ぶりに再開する。被災地チームである仙台は22日、埼玉スタジアム補助グラウンドで最終調整。MF関口訓充(25)は、J2横浜FCのFWカズ(三浦知良=44)魂を胸に、川崎Fとの再開戦に挑む。関口も計画していた岩手への支援活動を率先して行ったカズ。その背中に魅せられた仙台の背番号11が被災者へ勝利を届ける。

 東北や関東から尊い命を奪い尽くした大震災から43日、復興への1歩としてJリーグが再開する。川崎Fとの再開戦を前に、仙台関口の表情もさらに引き締まった。約1時間15分のチーム練習後、短いダッシュを自主的に行った。1月25日から40日間の通常キャンプ、さらに今月3日から震災の影響で始まった臨時キャンプ中も、ほぼ毎日、自主練習は欠かさなかった。

 開幕前、副主将に任命された。昨季まで「自分のためにサッカーをやっていた」と拒み続けた要職。しかし震災後その姿は一変する。きっかけは先月29日、日本代表対Jリーグ選抜の慈善試合だった。幼少時から憧れだったキングカズと後半17分、同時にピッチに立った。0-2で迎えた同37分、カズが劇的ゴールを決めると、真っ先に駆け寄ったのが関口。劣勢の中「追いつこう!」と必死で声を掛けてくれるカズに「これがチームを引っ張る選手なんだ」と感銘を受けた。

 鹿児島、宮崎で行った通常キャンプには精神面を鍛えるため、カズの著書「やめないよ」を持参。千葉キャンプ途中、左ひざ手術のため離脱したFW柳沢主将の穴を補おうと声を張り上げ、チームを鼓舞した。経験値は違えど、カズの姿勢を見習った。

 関口は被災地支援にも積極的だった。慈善試合の翌日の3月30日には、津波被害を受けた宮城・岩沼市の避難所を訪れ、子どもたちとサッカーをした。今日23日の再開戦を終えた後は「岩手や福島など、プロチームのない被災地に行きたい」と話していた。それを率先して行ったのがカズだった。練習の合間を縫って17、18日と岩手を訪問。関口は「ありがたいこと」と感激した。

 Jリーグ元年(93年)、関口は小学3年生。友人がプレゼントにテレビゲームをねだった。祖父から「ゲームを買ってあげようか」と言われたが「コーンを買ってほしい」と返した。生まれ育った東京・多摩市内の公園にコーンを置き、ドリブル練習をした。その頃、テレビに映るサッカー選手はいつもカズだった。

 自分が明るいニュースを届ける番になった。左足に「一人じゃない

 信じよう

 希望の光を!」、右足に「共に歩み

 未来に向かって」と刺しゅうしたメッセージ入りスパイクで挑む。「泥くさくても1-0で勝つ」。仙台の背番号11が被災地へ何かを届けたいと、ピッチに立つ。【三須一紀】