<ACL:G大阪2-0天津泰達>◇1次リーグE組◇11日◇万博

 神様、仏様、遠藤様!

 G大阪が天津泰達(中国)を下し、4年連続の決勝トーナメント(T)進出を決めた。0-0の後半29分、日本代表MF遠藤保仁(31)が22メートルのFKを直接入れて先制。後半ロスタイムには途中出場のU-22(22歳以下)日本代表MF宇佐美貴史(19)がPKを決め、突き放した。G大阪は天津泰達を得失点差で上回り、E組を首位通過。24日の決勝T1回戦(ラウンド16)では、ホームにC大阪を迎える「大阪ダービー」となった。

 後半29分、攻めあぐねていたG大阪にFKのチャンスが訪れた。ドリブルのMF宇佐美がファウルで倒される。ゴールやや左、距離は22メートル。壁は9枚。

 遠藤

 雨も風も強かったし、位置もよかった。特に、雨の時は巻くボールが失速することが多いので、最初からキーパーサイドに思いっ切り蹴ろうと思っていた。チャンスは来るだろうと思っていたし、焦りはなかった。

 鋭いライナーが壁の右を抜けた。横っ跳びの相手GKも笑うように、ボールが伸びる。ゴール右に値千金の先制点。天候を計算した冷静な判断だった。

 勝てば1次リーグ首位通過、引き分け以下なら敗退もあった。08年にはアジアを制し、3年間続けていた決勝T進出が途絶えるところだった。この試合がACL通算出場30試合目。チームメートのDF山口、MF二川(31試合)に次ぐ日本人3位の試合数の大黒柱が、勝負どころで働いた。

 後半ロスタイム、ペナルティーエリア内でFW平井が倒された。通常なら「コロコロPK」を持つ遠藤の出番。だが、ここで遠藤は、途中出場の宇佐美を逆指名した。

 遠藤

 お前、蹴れ。

 宇佐美

 え?

 監督に怒られないっすか?

 遠藤

 大丈夫。自信持って蹴れば入るから。

 今季8試合で無得点の宇佐美を気遣った。「点も取れていなかったので譲ったというか、彼自身のためにと思っただけ。俺が蹴っても外していたかもしれないし」。決して大声で引っ張るタイプではない。状況を冷静に見極め、良き方向へ導く。「リーダー」と言われるゆえんだ。

 普段から気遣いを欠かさない。両親の誕生日など節目には、鹿児島の実家へ必ずプレゼントを贈る。今年も、8日の母の日には大きなカーネーションを届けた。テレビの上に輝く末っ子の“気持ち”に、父武義さん(63)は感激する。「プロ入りしてから忘れずに送ってくれるんです」。武義さんが通勤に使うバッグは、2年前の誕生日に贈られた「宝物」だ。

 2年ぶりに日本勢全4チームが決勝Tに駒を進めた。ホーム万博でC大阪と戦う。「セレッソのことはお互いがお互いをよく知っているし、僕らはクラブワールドカップに出たいのでそこに向けて全力で戦うだけ」。【近間康隆】