<J1:横浜2-1大宮>◇第19節◇30日◇日産ス

 雨中の戦いで、首位の横浜が「天敵」を逆転で下した。過去1勝6分け6敗と、Jリーグで最も苦手としていた大宮に前半で1点リードされながら、後半に「雨好き」を公言するFW大黒将志(31)のヘディング2発で快勝。今季の勝ち点で、アウェーでホームの4倍以上を稼ぐ“外弁慶”ぶりを発揮していた相手を倒し、04年以来の優勝へまた1歩前進した。

 水を得た魚のように、大黒がぬれたピッチを動き回った。後半8分にCKから頭で押し込むと、出色は同20分。「金井のボールは練習の時からニアじゃなくて、真ん中が多いな。待ってみよ」。冷静にエリア中央でDF金井の左クロスに準備。一瞬でDFの前に走り込み、あっという間にボールはネットに消えた。頭で2発。一気の逆転劇。昨年、横浜FCで一緒にプレーしたFWカズに「憧れて」プロ人生初めてつける背番号「11」を、誇らしげにサポーターにさらした。

 「良い湿り具合でしたね」。ピッチがぬれているぐらいがちょうどよかった。スパイクのポイントは、メーカーに特別にお願いして細かく凹が刻まれている。ぬかるんだピッチでも、より地面をとらえる工夫。梅雨時期を「雨は良い」と待ち望んでいたが、1カ月遅れでも力を発揮した。

 今季新加入の男の力で、負のデータも打ち破った。大宮には、試合前までの対戦成績で1勝6分け6敗、ホームでも1勝1分け4敗、日産スタジアムでは1分け3敗と勝ちなし。しかも今季の大宮は、アウェー戦で5勝3分け1敗と、「外」で強かった。重なる不利なデータを、「雨好き男」の2発で吹き飛ばした。

 これで04年以来のホーム5連勝を記録した。その年は、名門が最後に優勝を飾った年だ。「横浜、サイコー」とお立ち台で叫んだ新加入の大黒。そしてその点取り屋が「絶大な信頼です」と話す日本代表DF栗原、中沢らの堅固な守備陣。攻守がかみ合って天敵を倒した勢いで、後半戦もリーグの主役に立ち続ける。【阿部健吾】