<J2:札幌2-0大分>◇第35節◇12日◇札幌厚別

 昇格圏再浮上へ得失点1差!

 J2札幌は大分に勝った。前半8分にMF内村圭宏(27)が先制点を決めると、後半40分に5戦ぶり先発のMF古田寛幸(20)が追加点を奪い、今季厚別最終戦を完封勝利で締めた。勝ち点は62。順位は4位のままで3位徳島と依然勝ち点で並んでいるが、得失点で1差と肉薄した。残り3試合。2位鳥栖にも勝ち点3差と接近し、昇格3枠の2枠を3クラブで争うサバイバルの様相を呈してきた。

 試合を決定づけたのは、5戦ぶりの先発抜てきに燃える古田だった。1-0の後半40分、内村からの縦パスを受けると、DF裏に抜け出し、得意の左足を振り抜いた。「内村さんがいいパスをくれた。フリーだったので、少し緊張した」。ボールはゴール左隅に吸い込まれ、貴重な追加点となった。これで先制した試合は16戦全勝。必勝方程式でラスト厚別を締めた。

 「何とか1点欲しいときに取れたのが良かった。出たら、絶対決めてやろうと思っていた」。前回先発の10月19日京都戦は、主将のMF河合の出場停止を受け、初めてゲームキャプテンを務めたが0-4大敗。その後は途中出場も精彩を欠き、前節東京V戦は出番もなかった。屈辱をバネにつかんだ24日ぶりのチャンス。負傷した近藤の代役だったが、石崎監督は「ゴール以外でも右サイドを積極的に突破して、思い切りの良さを出していた」と喜んだ。

 イメトレが生きた。前日11日のW杯アジア3次予選タジキスタン戦は、尊敬するMF香川の動きを入念にチェックした。「香川君も裏への飛び出しを狙っていた」。練習では青、パープル、オレンジなど複数のシューズを使用しているが、この日は香川と同じレモンイエローのタイプを選んだ。シューズの色だけでなく、プレースタイルもインプット。鮮やかな抜け出しからの1発で、2戦ぶりの勝ち点3を呼び込んだ。

 10年5月30日の富山戦で初ゴールを決めた思い出の厚別。聖地での今季最終戦を自らのゴールで締めた。「出られないときも、こうやって昇格争いのプレッシャーの中でやれている経験がうれしかった。腐ることはなかった」。高3でトップ帯同し、エリート街道を突き進んできた20歳が、壁にぶち当たり、乗り越えた。背中にはクラブ創設15周年を意味する15番。昇格を勝ち取るために重要なキーマンが、また1人、目覚めた。【永野高輔】