<天皇杯:清水5-0鳥取>◇3回戦◇16日◇アウスタ

 清水がJ2鳥取に大勝して7年連続16強入りした。前半にDF岩下敬輔(25)FW高原直泰(32)のゴールで主導権を握ると、後半にMF杉山浩太(26)が今季初ゴール。なおも今季限りで退団が決まっているFW永井雄一郎(32)の一撃が飛び出すなど5点を奪った。

 輝きは失っていなかった。3点差をつけた直後の後半26分、永井が呼ばれた。すでに来季の構想から外れ、今季限りでの退団が決まっていながらの出場。「見返してやりたい」という気持ちがいきなり出た。同34分に得意のドリブルで相手DFを股抜きでかわすと、右足を振り抜いて、ゴール左隅に突き刺した。今季公式戦初ゴールは、別れを惜しむサポーターによる「永井コール」で包まれた。

 退団が決まりながらも「このままユニホームを着ることなく終わるかもしれないと思っていた。まだまだやれるんだということを、アピールする場だと思う」という気持ちは仲間にも伝わっていた。ゴール直後はピッチ上で選手に囲まれ、ベンチからも祝福を受けた。「このまま終わるわけにはいかない」。同42分にはFW大前の右クロスに、頭で合わせ追加点を狙った。何もしないまま清水を去ることは、永井のプライドが許さなかった。

 現役続行にかける思いは強い。9日の練習前に、来季契約を更新しないことを告げられた。それでもサッカーをやめることは、選択肢にはなかった。来年1月には待望の第1子を授かる。「子どものためにも、まだまだやめるわけにはいかない」。さらなる新天地を求めるには、十分な理由があった。

 試合後、スタンドから誰よりもエールを受けた。リーグは残り3試合。天皇杯もまだ続く。「まだまだやれるでしょ」。スタンドに手を振りながら、証明してみせた。【栗田成芳】