<J1:G大阪1-2磐田>◇第3節◇25日◇万博

 派手なパフォーマンスとは無縁の磐田FW前田遼一(30)がPKで2点目を奪うと、アキレスけん断裂で戦列を離れたGK川口能活(36)のユニホームを掲げた-。磐田がG大阪を破り2連勝。05年9月10日の大宮戦以来、2388日ぶりの3位浮上だ。前半23分にMF山本康裕(22)の先制ゴールで勢いに乗り04年5月以来、敵地で勝てなかった相手を倒した。今年のジュビロはひと味違う。

 前がかりになっていたスペースを見逃さなかった。前半23分、MF菅沼実が左サイドから前線にスルーパス。ボランチの位置から長い距離を走ってきたMF山本康にピタリと合わせた。ゴール前で完全にフリーの状況となった山本康は、冷静に相手GKの動きを見て、股間を抜く技ありシュート。今季1号で貴重な先制点を呼び込んだ。

 開幕前はU-23日本代表合宿や遠征などでチームに同行できる時間が限られていた。さらに、代表では出場機会に恵まれず、くすぶった気持ちのままプレーを続けていた。それでも、開幕の札幌戦に照準を合わせ先発を勝ち取ると、ここまでリーグ戦3試合連続でスタメン出場。「ジュビロでしっかり活躍して代表のスタッフを見返したい。結果を残さなければロンドン五輪にも行けない」と話していた若き司令塔が自らの右足で鬱憤(うっぷん)を晴らした。

 先制点後は両サイドにボールを散らし、組み立て役に専念。森下仁志監督(39)は「遠藤(G大阪)のように日本を代表するボランチになってほしい」。本人と対戦する中、指揮官の期待通りの活躍を見せて中盤をコントロールした。

 この日は絶対に負けられない理由があった。22日の練習中にGK川口が右アキレスけんを断裂し全治6カ月と診断された。後半15分、エース前田は自らのドリブル突破で得たPKを冷静に決めて追加点。今季リーグ1号を決めると、ベンチに飾られていた「背番号1」のユニホームをサポーターに向けて掲げた。無念の長期離脱を余儀なくされた守護神の思いを胸に全選手が一丸となり、04年以来勝てなかった敵地で8年ぶりに勝ち点3を奪取。順位も7シーズンぶりに3位に浮上した。まだ無傷。結束力を増したジュビロの快進撃はまだまだ止まらない。【神谷亮磨】