<J1:清水3-2磐田>◇第6節◇14日◇アウスタ

 若きエスパルスの顔が、静岡ダービーで期待通りの活躍だった。清水は1点を追う前半ロスタイム、MF高木俊幸(20)が同点ゴール、後半にはU-23日本代表合宿から合流直後のMF大前元紀(22)が勝ち越しとダメ押し点となる2ゴールを決めた。磐田からのリーグ戦白星は09年8月以来、同3連勝も1年5カ月ぶり。勝ち点を12に伸ばし、堂々首位争いに名乗りを上げた。

 清水は確かに押されていた。前半12分にはCKから先制点を失い、サポーターからため息が漏れた。伝統の一戦。絶対に負けられない-。ただし、選手の強い気持ちは、押し込まれていなかった。

 同ロスタイム、途中出場のDF河井が右サイドでこぼれ球を拾う。「クロスを上げてもいい位置だったし、中が反応してくれていた」。迷わず右足を振り抜くと、走り込んだMF高木が懸命に体を伸ばして頭でゴールにねじ込んだ。「プロになってからは初めて頭で決めた。合わせるのがやっとで、ボールは見えてなかったけど、うまく入ってくれて良かった。この1点が試合のポイントになったと思う」。

 ホーム3戦連発と勢いに乗る高木の起死回生の1発で、後半に入ると完全に流れを手にした。ここまで無得点だったMF大前が目覚めた。同3分、高木の正確なクロスにダイビングヘッドで飛び込み、勝ち越しゴールをたたき込んだ。待ちに待った今季1号さえ決めれば、U-23五輪代表候補にも選出されるストライカーに怖いものはない。

 同43分にもFW高原からパスを受けると、待ち構える磐田DF2人をど真ん中から破り、体勢を崩されながらも右足でゴールネットを揺らした。同ロスタイムに1点を返されただけに、貴重なダメ押しゴールだった。試合後は雨の中、声援を送り続けてくれた1万6334人のサポーターへ「お待たせしました!」と気持ち良さそうに叫んだ。アフシン・ゴトビ監督(48)も「このダービーがどういうものなのかは理解していた。その中で試合のスタートは集中力を欠いて今までで一番最悪だったが、3つの素晴らしいゴールで正しい結果を残せた」と、チームを救った2人の若武者に賛辞を惜しまなかった。

 磐田には約3年勝てていなかったが、本拠地・アウスタでは05年以来これで9試合負けなしとなった。やはり、日本平で磐田には負けられない。開幕から7戦負けなしの相手を破り、勝ち点も逆転した。首位争い、ACL圏内も十分に視界に捉えたが、磐田を倒すことで得たものは数字以上に大きい。大前は「ダービーで2点を取って勝ったことは本当によかった。ここからです」。高木も「ダービーで勝てたのは大きい。この勝利を続けていきたい」と、頼もしく言った。ダービーこそ、清水の若者をますます大きくする舞台だった。【前田和哉】