<J1:広島4-1鳥栖>◇第27節◇29日◇広島ビ

 広島が首位独走態勢に入った。元日本代表FW佐藤寿人(30)が2ゴールを決めるなど鳥栖に大勝。佐藤は得点王争い独走となる20ゴールの大台に乗せ、94年ハシェックの19得点を抜いてクラブの1シーズン得点記録を更新した。2位仙台が1-3で清水に逆転負けし、今季最大の勝ち点5差に開いた。94年第1ステージ優勝経験こそある広島だが、初の年間Vを目指してラストスパートに入る。

 揺るぎない自信があふれていた。勝利の瞬間、佐藤は両方のこぶしを天に向かって突き上げた。広島が完勝した上に、自身も2得点と最高の気分だった。

 「うれしい。自分の好きなクラブでの記録。塗り替えたいと思っていた」

 ハシェックのクラブ記録19得点を18年ぶりに更新する今季20得点目。J1通算100得点など数々の記録を打ち立ててきた男がもう1つ金字塔を打ち立てた。

 1点先制後の前半34分にPKを得た。PK判定を巡る鳥栖の長い抗議の後に落ち着いてゴール右上に決めた。「すごく長くて難しかった。自分の中で集中することだけを考えた」。3試合ぶりの得点で、この時点でハシェックの記録に並んだ。

 新記録となる2点目は試合終了間際だ。MFミキッチのロングボールに反応。左足でのループシュートにGKが触れることはなかった。鳥栖に1点を奪われた直後だった。「あのまま勝っていてもよくなかった。相手GKを見て落ち着いて決められた」と自画自賛する。後半13分の森崎浩のゴールでは、相手DFのクリアミスを奪って右クロスを上げてアシストするなど、3得点に絡んだ。

 チームは3連勝で、2位仙台に今季最大の勝ち点5差をつけた。残りは7試合。「まだまだ勢いをつけ始めたぐらい。まだまだ加速させる」と意気込む。J1で自身初の20得点、通算は115得点となった。「もっとハードルを高くして積み重ねていきたい」。クラブ初の年間王者と、ぶっちぎりの得点王獲得で歴史に名前を刻む。【中牟田康】

 ◆シーズン20得点

 得点ランキング独走中の広島FW佐藤が、自身J1初の年間20得点(J2では2度記録)。広島では94年のMFハシェックの19得点を抜いてクラブのJ1年間最多得点記録となった。J1リーグ戦でシーズン20得点以上は、09年の磐田FW前田以来、3年ぶり44人目(57度目)。日本人選手では13人目(18度目)だが、過去12人はいずれも右利きの選手で、左利きの日本人選手としては今季の佐藤が初。