札幌の来季監督に、元札幌MFで現福岡U-18監督を務める財前恵一氏(44)が就任することが5日、決定的となった。室蘭大谷高(現北海道大谷室蘭)出身で、初のOB、道産子監督となる。96年に札幌で現役引退後、97年から計13年にわたり、札幌の下部組織などを指導。来季は、若手中心の編成となるが、MF古田らユース出身者の特長も熟知する同氏に、かじ取りを託す。

 ついに来季の柱が見えてきた。札幌では石崎監督の後任として財前氏や前川崎監督の相馬直樹氏(41)ら複数候補者を挙げて交渉。その中で、道産子の若手が増える新チームに最もふさわしいとして財前氏が第1候補に浮上した。5日、就任要請を出した。今後は条件面の詰めを行い、近日中に正式発表となる。

 フレッシュなチームを象徴する人選だ。クラブ関係者は「チームがJ2で出直すという意味でも適任者と考えている」と話した。Jリーグ監督歴はないが、04年から06年まで3シーズンは柳下正明監督の下、アシスタントコーチを務めるなどトップチームの現場指導を経験済み。09年にはS級ライセンスを取得しており就任への障害はない。

 同関係者は「財前氏は、ユース出身の若い選手を直接、指導しているメリットもある」と言う。MF古田はU-18監督時代に指導。プロになるための基礎や、精神面を鍛えたのが同氏だった。今季トップに昇格したDF奈良、小山内、MF荒野、前、FW榊も高校1年時に指導。現在の育成部門の監督、コーチ陣にも旧知が多く、ユースとの連携面でも力を発揮できる。

 来季は6人がトップ昇格するなど、10代の選手が主力として活躍することも要求されるだけに、同氏の手腕が生かされる。室蘭大谷高時代には天才ゲームメーカーとして全国選手権4強に輝くなど道民の知名度も高い。札幌が道産子かつ、OB選手として初の新人監督を迎え、1年での再昇格を目指す。

 ◆財前恵一(ざいぜん・けいいち)1968年(昭43)6月17日、室蘭市生まれ。室蘭大谷高から87年に日産自動車(現横浜)へ入団。94年に柏、札幌に移籍した96年限りで現役引退。97~03年は札幌U-18などのコーチ、監督を務め、04年にトップチームのアシスタントコーチに就任。07年から再びU-18コーチに復帰した。10年から福岡U-13監督を務め、今季は福岡U-18監督。実弟は仙台スクールコーチの財前宣之。