札幌を運営する北海道フットボールクラブが、新社長として現チームアドバイザーで元主将の野々村芳和氏(40)招聘(しょうへい)に動いていることが13日、分かった。J2降格に伴い、矢萩竹美社長(62)は来年3月の任期満了と同時に退任が濃厚。トップチーム人件費がクラブ史上最低の2億2000万円前後という緊縮財政を乗り切るため、Jクラブ初のOB社長という大胆人事で抜本的改革を目指す。

 札幌が、巻き返しへの大きな一手を打つ。矢萩社長はJ2降格の責任をとり、来年3月の任期いっぱいでの退任を決意。北海道フットボールクラブでは新社長として、元札幌MFで00年にJ1昇格、主将を務め01年にはクラブ初のJ1残留に導いた野々村氏に白羽の矢を立てた。

 既に筆頭株主のサポーターズ持株会などに、野々村氏の招聘を提案。早ければ20日開催の定例取締役会の議題として諮り、3月の株主総会を経て正式決定となる。同月までは事務的に矢萩社長が任期を全うするが、事実上、新チーム始動の年明け1月から、野々村氏がクラブトップとしてイニシアチブを取っていく。

 三上大勝強化部長(41)は、経営とチーム編成を統括するゼネラルマネジャー就任が濃厚。同部長と野々村氏は既に、来季編成についても連携して作業を開始している。コーチ就任が決定的な名塚善寛氏(43)は00年に岡田武史元監督の下でJ1昇格、01年に残留を果たした同士で、札幌最強時代を築いた中心選手。初のOBかつ道産子監督に決定した財前恵一氏(44)を、フロントからはOB社長、現場ではOBコーチが支えるという最強の布陣でJ1再昇格を目指す。

 野々村氏はこれまで、テレビ解説やサッカー教室の運営、コーチ派遣などを行うクラッキ社(本社・東京)の代表取締役社長を務めながら、札幌のアドバイザーとしてもクラブをサポートしてきた。今後はフロントの長として、本腰を入れたクラブ改革に着手する。クラッキ社の主要事業となっている教室運営に関しては部分的に別のスタッフに委ねるなど、既に札幌社長就任に向けて準備を進めている。

 過去の社長は札幌市やスポンサー社など支援母体から派遣されており、初の選手出身者となる。フロントにサッカーを熟知し、人脈豊富な同氏を据えることで、これまで以上に三上強化部長と連携したチーム編成、クラブ経営を推し進めていく。来季トップチーム人件費は、クラブ史上最低となる2億2000万円前後まで圧縮される。野々村新社長による的確な補強、抜本的経費削減、スリム化で札幌をよみがえらせる。

 ◆札幌の歴代社長

 96年の斉藤社長から矢萩社長まで6人が歴任。これまでは札幌市や北海道新聞など、支援団体からの派遣が主体だった。選手出身者の社長はクラブ初。Jリーグ全体では、神戸などでプレーし07年に鳥取社長に就任した塚野真樹氏がJリーガー初の社長。野々村氏が決まれば2人目となる。塚野氏はJFL時代の鳥取でプレー後、引退して就任。純粋にJクラブのOBとして古巣の社長に就任するのは野々村氏が初となる。

 ◆野々村芳和(ののむら・よしかず)1972年(昭47)5月8日生まれ、静岡・清水市(現静岡市清水区)出身。清水東高、慶大法学部を経て95年に市原(現千葉)入り。00年札幌に移籍。冷静かつクレバーなボランチとして同年のJ2優勝、J1昇格に貢献した。01年は主将として岡田武史監督を支え、クラブ唯一のJ1残留に導いた。同年シーズン後に現役引退。06年にはサッカー教室運営などを行うクラッキ社を立ち上げ、代表取締役社長を務めながら、札幌のアドバイザーとしても尽力。現役時代の成績はJ1通算118試合6得点、J2通算36試合2得点。175センチ、67キロ。血液型A。