<J1:横浜2-1鳥栖>◇第20節◇10日◇ニッパ球

 ザックジャパンの「新戦力」、鳥栖のFW豊田陽平(28)が万能性を見せつけた。日本代表ザッケローニ監督(60)が視察に訪れたアウェーの横浜戦で、チームは敗戦。自身もシュートは1本のみで無得点という結果に反省ばかりを口にしたが、前線での献身的な守備、体を張った競り合いなどを披露。代表常連組のFW前田遼一(31)、ハーフナー・マイク(26)が不在の親善試合ウルグアイ戦(14日、宮城ス)で生き残りをアピールする。

 日本代表指揮官の見守る前で、前線で献身的に守備に走り、起点として激しく競り合い、そしてゴールを狙った。無得点で敗戦という結果に、豊田は「パスも入ってこなかったし、シュートも打てず、チームを勝たせられなかった。アピールというほどではない」と反省ばかりを口にしたが、万能FWとしての存在感はしっかり示してみせた。

 「献身的な守備」。常連組で不動の1トップである前田の持ち味でもあるが、豊田にとっても重要なアピールポイントだ。前半は完全に劣勢だったが、我慢して前線で守備に走り、一瞬のチャンスを待った。「厳しい状況の中で何ができるかを考えないと」。その考えを体現した。

 「前線のポストプレー」。前田、ハーフナーが常に求められる前線での起点の動き。後半に入り、流れが鳥栖に傾くと、前線で横浜DF栗原や中沢と競り合いながら、起点に。後半20分にはドリブルで抜け出し際どいシュートも放った。「自分たちの流れの時に点を取れないと」と言うものの、点取り屋としての一瞬の怖さを見せつけた。

 ザッケローニ監督は8日の代表発表会見で「ゴールだけが選考基準ではない。チームメートに得点の可能性を与えながら、自分も得点に絡める」と豊田を評した。7月下旬の東アジア杯で手元に置き、指揮官が求める「和」「チームプレー」をこなせるストライカーを高く評価した。

 豊田本人は代表発表後「選出は五分五分だと思っていた」と本音を明かしながらも「目標はW杯。生き残りたい」と意気込んでいた。「チームと代表ではサッカーも変わってくる。自分らしさをしっかり出せるように切り替えていきたい」。前田、ハーフナーに劣らぬ力はある。14日のウルグアイ戦。W杯に向け、本田、香川、岡崎との連動で新しい何かを生み出せるか-。豊田の真の力が試される。【菅家大輔】