<J2:G大阪4-0熊本>◇第39節◇3日◇万博

 「生涯ガンバ」だ!

 G大阪の日本代表MF遠藤保仁(33)が、J1復帰へ導いた。前半8分に昇格決定への号砲となる先制弾を頭で決めた。試合は熊本に完勝。神戸-京都戦が0-0で引き分けたため、首位浮上のG大阪と3位京都との勝ち点が10差に広がり、残り3試合でJ1自動昇格の2位以内が決まった。クラブ側は功労者の遠藤に、長期契約を提示する方針であることが分かった。

 願いを込めたボールは、ゴールに吸い込まれていった。小雨舞う前半8分。ゴール前で待つ“FW遠藤”の頭上へ、MF二川からの左クロス。長髪をなびかせながらヘディングで合わせ、貴重な先制点を挙げた。足ではなく頭で決めた1発が、4得点の号砲になった。本拠地での勝利から6時間後。神戸-京都戦が引き分けに終わり、1年でのJ1復帰が決定。ピッチを離れ、静かにその瞬間を迎えた。

 「昇格が決まったので、良かったと思います。ただリーグ戦は途中ですし、残り3戦しっかり勝って、J2優勝をして来季を迎えられるように頑張りたい」

 チームの大黒柱は、一家の大黒柱でもある。5月下旬に第4子となる次男が誕生。遠藤家は大家族になった。主将を任された今季、悩んでいる後輩を見つけると食事に誘った。甘い言葉はかけない。ただ一緒の時間を過ごすことで、苦しみを分かち合った。この日、4人の子供を連れて観戦した妻貴美子さんは「勝っても、負けてもいつも通り。試合に負けた日、私が『負けちゃったね』と言うと『J1には上がれるから大丈夫だよ』と堂々としていました」。揺るぎない信念が、チームと家族を支えた。

 “生涯ガンバ”も現実的になった。14年末で契約は満了する。クラブ側は「それ(契約延長)を見越したことも踏まえて、検討しないといけない」。今オフにも、来年1月に34歳になる選手には異例の複数年契約を提示する考えだ。セリエAなどからオファーが届きながら欧州挑戦は封印してきた。愛着ある大阪で骨をうずめる土台は固まりつつある。

 「全員がまた優勝したいと思っている。今年もJ2で優勝したいですし、来年も(J1で)優勝したい。注目度が高い試合が増えるほど成長できる。強いガンバをもう1度作りたい」

 働き盛りの33歳だ。来年のW杯では本田圭佑に続くように世界一を宣言。05年以来のJ1制覇、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)再挑戦も視野に入れる。胸に抱く目標は、たくさんある。【益子浩一】

 ◆ガンバ大阪

 1980年(昭55)に松下電器サッカー部として創部。86年に日本リーグ1部昇格、90年度に天皇杯を初制覇。93年J元年から参入。リーグ1度(05年)、ナビスコ杯1度(07年)、天皇杯2度(08、09年度)。08年にACL初優勝でクラブW杯出場。