<J2:松本2-3山形>◇第40節◇10日◇松本

 山形がFW大久保剛志(27)のJ初ゴールを含む2得点で、松本との激闘を制した。相手GKに先制点を許す苦しい展開の中、後半24分から途中出場。28分に秋葉のクロスを頭で合わせて追いつくと、2-2の後半ロスタイムにPKを沈めて競り勝った。6位徳島との勝ち点5差の10位に浮上し、プレーオフ進出に望みをつないだ。

 待ちに待った瞬間が訪れた。左サイドに流れて顔を上げた秋葉と、目があった。大久保は「練習からマサルさん(秋葉)が『剛志の動きだしはいい』と言ってくれていた」と信じてゴール前へ飛び込んだ。05年の仙台入団から9年。結果を残せずJFLソニー仙台への移籍を経験し、J9試合目での初ゴールだった。西河の退場で数的不利となった終了間際には、志願してPKを蹴りこんで勝ち越し。「僕をJの舞台に戻してくれた奥野監督と中井川GMに恩返しがしたかった」。真っ先にベンチに向かって走り、抱き合って喜びを爆発させた。

 ずっと支えてくれた美樹夫人への感謝のゴールだった。中学校の同級生で、9年の交際を経て10年12月に結婚。今年3月に長男光騎くんが誕生したが、出産後に美樹さんの容体が急変した。立ち会った大久保が「思い出すだけでぞっとする」という状況から、約1カ月の入院生活を経て回復したという。誰よりも周囲への心配りを忘れない苦労人は「妻が支えてくれたおかげ」。Jの舞台で輝くことをあきらめなかった男が、山形の希望の光となった。【鹿野雄太】