J2札幌が、元日本代表でオーストラリア・ウエスタンシドニーMF小野伸二(34)の獲得に動いていることが19日、分かった。既に相手クラブに正式オファー。小野本人は札幌入りに前向きで、今後クラブ間での条件交渉に入る。札幌は攻撃力アップのキーマンかつ、若手選手の指導役としても期待。W杯3大会を経験し、欧州リーグでも活躍したベテランMFを加え、J1再昇格を目指す。

 札幌の野々村芳和社長(41)はこの日、札幌市内で行われた定例取締役会で、小野と交渉を開始したことを報告した。クラブとして獲得に乗り出すことが、正式に承認された。同社長は「(交渉に)動いていることは間違いない。決まっていることは何もないが、小野選手にこちらの希望は伝えた」と明かした。

 J1再昇格を目指し、日本を代表するゲームメーカーの獲得を目指す。今季は財前監督が就任し、DFラインからつないで崩すパスサッカーの熟成を目指してきたが、序盤の出遅れが響き、勝ち点2差でプレーオフ進出を逃した。そこで、内村、前田らの得点源を生かせるコントロール役として、W杯やオランダ、ドイツなど高いレベルでプレー経験のある34歳に白羽の矢を立てた。同社長は「目指すサッカーを、より早く実現するために小野選手の力を借りたい」と話した。

 クラブではチーム強化と同時に、若手育成という、もう1つのミッションも要望している。降格した今季は主力を大量に放出し、6人のユース選手を昇格させるなど、若いチームでの出直しとなった。クラブ幹部は「若い選手が多いチーム。成功した人を近くに置くことでチームがどう成長できるか。それが期待できる選手」と話した。小野本人も札幌のオファーに、やりがいを感じており、将来的に日本でのプレーを希望。あとはクラブ間の交渉次第という状況にある。

 清水では昨季、若返りを図るチームの中で出番が減ったが、10月にオーストラリアのウエスタンシドニーに移籍してからは、結果を残している。12-13年シーズンは26試合で8得点を挙げ、Aリーグ参入初年度のチームを、いきなりレギュラーシーズン優勝に導いた。今季も主力として、10試合中9試合に出場(先発7試合)し1得点と、リーグ2位を走るチームの核となっている。年齢を重ねても天才的なパスセンスは衰えておらず、札幌に加われば、大きな戦力アップにつながる。

 チームだけではなく、営業的なプラス効果も期待できる。98年フランスW杯を18歳で経験。日本や海外での知名度も高く、個人的なファンも多い。来季はクラブ史上最多の17試合を札幌ドームで開催することが確定。観衆増は確実で、ここに小野効果も加われば、3700万円にのぼる債務超過の解消や経営改善に向けた貴重な収入源につながりそうだ。

 ◆小野伸二(おの・しんじ)1979年(昭54)9月27日、静岡・沼津市生まれ。清水商から98年に浦和入りし、同年新人王獲得。01年にオランダ1部フェイエノールトへ移籍し、UEFA杯優勝に貢献。06年に浦和に復帰し、08年にドイツ1部ボーフム移籍。各世代の日本代表でも活躍し、99年U-20W杯では準優勝、W杯は98年フランス大会から3大会連続で出場した。10年に清水、12年10月にオーストラリアのウエスタンシドニーに移籍。02年度アジア最優秀選手。J1通算178試合29得点、J2通算24試合7得点。国際Aマッチ通算56試合6得点。175センチ、74キロ。家族は夫人と2女。血液型O。