札幌はファンを信じる-。Jリーグは13日、差別的な内容の横断幕が掲出された浦和に対し、次節を無観客試合にする処分を下した。J2札幌は、今回の一件を真摯(しんし)に受け止めつつ、特別に公式サイトで注意を呼びかけるなどはしない方針を固めた。これまでもモラルを持った応援を続けてきており、サポーターそれぞれの自主性を重んじる姿勢を貫いていく。

 勝って鼓舞し、負けた時でも熱くゲキを飛ばす札幌サポーターは、クラブにとって“身内”のような存在だ。この日、Jリーグは、浦和に、かつてない厳しい制裁を下した。Jリーグ初の無観客試合。00年にはJ2優勝をかけて死闘を繰り広げた間柄でもある。今はカテゴリーは違えど、同じJクラブとして、その重みは真摯に受け止めた。だが、札幌はファンへの特別な注意喚起等は行わない方針を固めた。

 サポーターが筆頭株主である札幌。その愛情は、元選手だったクラブのトップが一番、知っている。野々村芳和社長(42)は、浦和への制裁を確認した上で「札幌サポーターに、そういう人はいないと信じている。だから特に呼びかける必要はない」と判断。クラブは、コールリーダーを通じ、モラルある応援を今後も続ける旨、伝える程度にとどめる。

 無観客試合は選手にとってもつらいこと。「最悪の結果。それだけは避けないといけない」とFW内村はいう。副主将のDF日高は「プロは観客にいいプレーを見せるためにやっている。その人たちがいないのはきつい、この一件で見に来られなくなった真剣なファンの人がかわいそう」と話した。

 98、02、08、12年と過去にJ最多4度の降格を経験した札幌だが、不祥事を起こしたことはない。負けが込んだ時は厳しい横断幕が出ることもあったが、それは愛情の裏返し。チーム、クラブへの叱咤(しった)激励の気持ちが見えるもので、差別的なメッセージが掲げられたことは、一切ない。サポーターとともに歩むチームカラーは、これからも変わることはない。